近年、さまざまな企業が取り入れているリフレッシュ休暇は、名前の通り従業員が心身をリフレッシュするために与えられます。リフレッシュ休暇の過ごし方に決まりはありませんが、どうせならメリットを最大限に活かしたいものです。
そこで、リフレッシュ休暇を活かすため、有給との違いやメリット・デメリット、注意点をまとめました。リフレッシュ休暇取得の際には、ぜひ確認してください。
リフレッシュ休暇って有給と何が違うの?
リフレッシュ休暇とは、一定の勤続年数を超えた社員に対し、日頃の疲れを癒してもらおうと連続休暇を与える制度のことです。厚生労働省によると、以下のように定義されています。
職業生涯の節目に、勤労者の心身の疲労回復などを目的として付与される休暇
従業員に与えられる休暇には、法律で与えることが義務づけられた「法定休暇」と、法的には定めのない「法定外休暇」があります。法定休暇の代表的なものは「有給休暇」で、雇用形態に関係なくすべての従業員が対象となり、入社日から6ヶ月が経過してその間に8割以上の勤務が認められた場合、理由を問わずこの休暇を取得できる権利が得られます。
2019年には、有給休暇の取得推進のため、年次有給休暇(1年に与えられる有給休暇)のうち5日間の取得は義務とされました。これはすべての企業において、年10日以上の年次有給休暇が与えられる労働者(管理監督者を含む)の全員が対象となっています。
一方、リフレッシュ休暇は「法定外休暇」に分類されますから、導入するかどうか、また取得条件や日数などの詳細は各企業の裁量に委ねられています。一般的には勤続5年目、10年目など、ある程度長く勤めている社員に対し、その節目の年に休暇を与えるケースが多いようです。
リフレッシュ休暇中を有給とするか無給とするかも、当然各企業の判断に委ねられています。そのため、法的にはどちらにしても問題はないのですが、実態としては導入している企業の9割以上が有給休暇としている旨のデータがあります。いわば、会社側からの感謝を示す休暇でもありますので、お金の心配がないよう有給休暇とされているようです。
日数は平均的に5日間で、通常の有給休暇とは別に与えられ、その前後の土日と合わせて8連休になるよう取得させる企業が多いようです。勤続年数が10年、15年と長くなっていくにつれ、さらに休暇日数を多く取得できるようにしている企業もあります。通常の有給休暇と組み合わせて活用する取得パターンも多くなっているようです。
リフレッシュ休暇にはどんなメリットがある?
リフレッシュ休暇にはさまざまなメリットがありますが、主に企業にとってのメリットと従業員にとってのメリットに分けて見ていきましょう。
企業にとってのメリット
- 社員のモチベーションアップ
- 長い年月勤務を続けて連続休暇をもらえるため、帰属意識が高まると考えられる
- 心身ともにリラックス・リフレッシュした後は、仕事に身が入りやすくなる
- ワークライフバランスが向上することで、社内が活性化する
- 有能な人材の確保
- 求人をかけた際、有能な人材が集まりやすくなる
- 企業によっては30日間もの連休を許可するところもあり、企業の特色を出して人材確保につなげる方法も
- 有能な人材を採用できたあかつきには、リフレッシュ休暇の制度で離職率を下げやすくなり、定着率のアップにもなる
- 取得者以外の労働者にとって、良い成長の機会に
- 業務の引き継ぎを行う過程で、内容や進め方など非効率な部分をチェックできる
- 代替業務をこなすため、業務の属人化を防ぎ従業員の多能化促進にもなる
- 代替要員がその業務をこなせるかどうか、能力測定の機会になる
- 代替要員に業務を実践してもらい適正を測り、場合によっては権限委譲も考慮できる
このように、リフレッシュ休暇は企業側にとっても大きなメリットの一つと考えられます。中には、休暇を活用して取得者がキャリアアップを図るケースもあり、厚生労働省なども経営改善の一環として積極的な休暇の付与・取得を推進しています。
従業員にとってのメリット
- 仕事の生産性向上
- 業務効率を改善するためには、仕事に対する意欲や気分が大きく影響する
- 疲労が続いている状態では、思考が働かず生産性も低下してしまう
- 家族や友人と過ごす、趣味などプライベートな時間を充実させるなどといった環境を会社が作ることで、労働意欲や仕事の効率アップに
- 一定時間仕事から離れることで、日頃関わらない人や物に触れて新たな視点を得られる
- 計画的な休暇取得ができる
- 旅行や帰省など、長期的な休暇を計画的に取得できる
- 目的を持って自ら計画・行動し、目的を遂げるというトレーニングにもなる
- 休暇を使い、スキルアップなどを図ることもできる
- メンタルヘルス対策にもなる
- 肉体的にも精神的にもストレス解消につながるので、メンタルヘルスケアに有効
また、取得者以外の従業員にとっては、リフレッシュ休暇によって人員が減ることで他のメンバーや管理職層の仕事をフォローすることもあり、スキルアップにつながります。
このように、リフレッシュ休暇は企業にとっても従業員にとってもさまざまなメリットが考えられます。リフレッシュ休暇をまだ導入していない企業の方は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
リフレッシュ休暇にデメリットはある?
一方、リフレッシュ休暇には以下のようなデメリットも考えられます。
- 企業側のデメリット
- 給与や支援金の発生など、コストがかかる
- 欠員により、現場の負担が増加する
- 休暇取得に積極的でない従業員にとっては、休む従業員のフォローばかりという不満が溜まってしまうことも
- 従業員側のデメリット
- 休暇取得にあたって、業務の引き継ぎを行わなくてはならない
- 他のメンバーに負担をかけてしまうため、申し訳ないという気持ちが生まれることも
- 休暇明けに仕事量が増え、残業が増えてしまう可能性がある
- 上記のような不安があり、休暇を完全に楽しめない可能性がある
このように、デメリットの多くはリフレッシュ休暇に対する従業員の理解や協力をいかに得るか、取得する従業員に負い目や使いにくさを感じさせないかという部分に関わってきます。そこで、企業側としては以下のような工夫をすると良いでしょう。
- 取得の時期を想定しておく
- 繁忙期などに突然休むことになると、企業側の損失や負担も大きくなる可能性がある
- 人が減って困る時期はなるべく避けてもらうなど、あらかじめガイドラインを作成しておくと良い
- 制度として、きちんと取得させるよう呼びかける
- 現在は、法で定められている有給休暇などであっても、取得しづらいという声も
- 周囲に気を遣って長期休暇が取得できない、しづらいとならないよう、企業側がサポートする必要がある
- 制度として作ったならきちんと理解し、対象者には取得してもらうよう、従業員に説明や働きかけを
リフレッシュ休暇をとるときに気をつけたいことは?
リフレッシュ休暇が就業規則で定められていて、自分が取得の要件を満たしていれば、ぜひ活用しましょう。ただし、リフレッシュ休暇を付与するかどうかは企業の裁量に委ねられていますので、要件を満たさない場合は拒否されてしまうこともあります。例えば、以下のようなケースに当てはまらないかどうか、念のため確認しましょう。
- 長期間勤続した社員の慰労という趣旨にそぐわない取得目的である
- 会社と労働トラブルを起こし、退職までの間にリフレッシュ休暇を取得する
- 有給休暇と合わせてリフレッシュ休暇を取得し、業務に支障が出るほどの長期間休暇になってしまう
また、リフレッシュ休暇はあくまでも企業側が恩恵的に与えるものなので、法定休暇である通常の有給休暇とは異なり、細かい部分のルールは企業側が自由に決められます。そのため、平均的な日数より少ない、要件に合わなければ取得を拒否し権利を消滅させても良い、など、法的な保護が非常に薄い傾向にあります。
この点を従業員側が理解しておらず、強く請求すると労働トラブルとなってしまい、労働者に不利な結果を招いてしまう可能性もありますので、注意しましょう。他にも、権利が発生した年度にしかリフレッシュ休暇を利用できない、休暇後にも継続勤務が予定されている従業員しか利用できないなどの制限があるケースもあります。
逆に、リフレッシュ休暇の要件に当てはまり、制度としても企業側としても取得に問題がないという場合は、心理的な抵抗を排して気兼ねなくリフレッシュ休暇を取得するため、以下のようなことを心がけましょう。
- 引き継ぎを行う
- 休暇中、自分の業務を対応してもらう従業員にきちんと引き継ぎを行う
- 引き継ぎの不十分によって会社に迷惑がかかったり、休暇中に連絡を受けてイヤな思いをしたりしないための重要な準備
- 代替要員を育成する
- リフレッシュ休暇を取得するほどの勤続年数の社員にとっては、部下の教育や育成も重要な業務
- リフレッシュ休暇を取得しても業務に支障が出ないよう、あらかじめ代替要員となる部下を教育・指導しておく
- 目的に合った取得を
- リフレッシュ休暇は、企業からの感謝の制度とも言える
- リフレッシュ休暇の取得に後ろめたさを感じるなら、目的が休暇取得の趣旨に合っていないかも
- 企業側が考える趣旨に合うようなリフレッシュ休暇を取得しよう
こうしたことをしっかり理解した上で、就業規則に則ってリフレッシュ休暇を取得するのであれば、リフレッシュ休暇の取得は企業側にとってもメリットがあるはずです。しかし、企業側がリフレッシュ休暇の制度を用意していたとしても、直属の上司などがリフレッシュ休暇の取得に対して難色を示すことがあるかもしれません。こうした場合であれば、上司に遠慮しすぎることなく、堂々とリフレッシュ休暇を活用しましょう。
おわりに:リフレッシュ休暇は、企業にも従業員にもメリットが多い
リフレッシュ休暇は、通常の有給休暇などの「法定休暇」ではなく「法定外休暇」に当たりますので、その詳細や付与するかどうかは企業の裁量に委ねられています。しかし、企業にとっても従業員にとってもリフレッシュ休暇取得はさまざまなメリットがあります。
取得するときに要件や制限をよく確認する必要はありますが、満たしているのならぜひ堂々と取得しましょう。もちろん、気兼ねなく取得するための準備も忘れないでください。
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