ストレスで眠れないのはなぜ?睡眠の悩みを改善する方法はある?

ストレス

眠れない、寝ても早朝に目が覚めてしまうなど、睡眠の悩みはさまざまです。特に、悩みや心配ごとがあると、布団に入ってもなかなか寝つけないのは珍しくありません。このように、精神的なストレスはしばしば睡眠の妨げになることがあります。

では、精神的なストレスが睡眠障がいにつながってしまうのはなぜなのでしょうか。今回は、睡眠障がいとストレスの関係についてご紹介します。

眠れない、目が覚めてしまう睡眠障がいとはどんな状態のこと?

睡眠障がいは不眠症とも呼ばれ、寝つけない、夜中に起きてしまうといった夜間の症状だけでなく、睡眠が不十分なことで日中の生活に問題が起きている状態を指します。厚生労働省の定義によれば、睡眠障がいとは「睡眠に何らかの問題がある状態」のことです。つまり、以下のような状態はいずれも睡眠障害と考えられます。

  • 寝つけない(入眠困難)
  • 夜中に目が覚めてしまう(中途覚醒)
  • 朝早くに目が覚めてしまう(早朝覚醒)
  • 朝起きたときの気分がすっきりしない(熟眠障がい)
  • 目覚めた後、布団からなかなか出られない(熟眠障がい)
  • 昼間に眠気が続く
  • 昼間の活動のパフォーマンスが低下する
  • 睡眠中に異常な行動をとる
  • 睡眠リズムが乱れる

睡眠障がいは人によって見られる症状が異なりますが、いずれも十分な睡眠や休息の妨げになるため、心身や社会生活に支障をきたす可能性があります。中途覚醒では、一度眠りについた後も何度も目が覚めてしまったり、早朝覚醒では朝早くに目が覚めてしまった後、眠れなくなってしまったりするため、特に睡眠時間が短くなりがちです。

このように睡眠時間が短くなると、どうしても昼間に眠気が残ってうとうとしてしまったり、仕事や勉強のパフォーマンスが低下してしまったりします。場合によっては、労災にもつながるような大きな怪我や疾患を引き起こす可能性もありますので、夜間や早朝の症状だけでなく、日中の症状もよく観察しておくことが重要です。

たくさん寝たはずなのに日中眠くて仕方がない、仕事中によくあくびが出る、居眠りをしてしまうなどの症状がある場合は、睡眠障がいかもしれません。また、「最近、いびきがひどくなった」「寝言が増えた」などと家族から指摘される場合、眠りが浅くなっている可能性があります。いずれの場合も、続くようなら睡眠障がいを疑いましょう。

睡眠障がいとストレスはどう関係しているの?

睡眠障がいは、序文でもご紹介したように精神的な不調と非常に密接な関係があります。例えば、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」の中でも「不眠などの睡眠障がいは、精神疾患で頻度の高い症状である」と触れられています。特に、うつ病の早期には患者さん自身が精神疾患に気づいておらず、不眠の症状だけを訴えて病院を受診することもあります。

一説では、うつ病に罹患した人の約8割が何らかの睡眠障がいを抱えるとされており、睡眠がとれないことで十分な休息がとれず、ミスや遅刻が増え、そのことに対する叱責や自責でさらに落ち込み、明日もミスをするのではないかと悩んで眠れなくなってしまう、という悪循環に陥ってしまうことも珍しくありません。

このように精神的なストレスが不眠につながるのは、ストレスホルモンの一つである「アドレナリン」というホルモンの影響によるものだと考えられています。ストレスを強く感じると、身体は「生命の危機だ」と感じ、アドレナリンをはじめとするストレスホルモン(ストレスに対抗するためのホルモン)を分泌します。

アドレナリンは、動物が敵から逃げるときや、狩りをするときに分泌されるホルモンで、心拍数を増やしたり、冷や汗を出したり、呼吸数を増やしたりといった「ストレス反応(身体が興奮状態になる)」を引き起こします。身体が興奮状態になることで、逃げたり狩りをしたりするのに適した瞬発力を引き出すことができるのです。

通常、アドレナリンの分泌はストレスがなくなれば止まり、身体のストレス反応もおさまり、平常時の状態に戻ります。しかし、ストレスが長期間にわたって続くと、ストレスから解放されてもアドレナリンの分泌が止まらなくなってしまいます。すると、常に身体は興奮状態に置かれ、休憩中や睡眠中でも脳や身体が活動し続けるため、眠れなくなってしまうのです。

睡眠障がいが続くと、身体にどんなリスクがある?

私たちの身体は、細菌やウイルスなどの異物から身体を守る「免疫系」、ホルモンなどの伝達物質によって体調を整える「内分泌系」、運動や体調を一定の状態に保つ「自律神経系」など、さまざまな仕組みが複雑に働きあって恒常性が保たれています。しかし、ストレスによってこれらの機能のバランスが崩れた状態が長く続くと、免疫系が弱まって病気にかかりやすくなったり、体調を保てなくなったりとさまざまな不調が起こってきます。

ストレスによって睡眠障がいの状態が長く続くと、最初に脳の機能の不調を感じる人が多いとされています。通常の一時的な睡眠不足であっても、翌日頭が回らない、ミスが多くなるといった経験をした人は多いのではないでしょうか。睡眠障がいによって慢性的に睡眠不足の状態が続くと、やはり同じように脳の機能が低下してきます。

これは、仕事に集中する、車を運転するなどといった高度な操作をするためには、脳の認知機能や記憶力など高度な機能をいくつも組み合わせて処理を行っているためです。言うなればパソコンでたくさんのソフトを同時に起動しているのと同じことで、非常にエネルギーやメモリ(短期記憶)を必要とします。そのため、睡眠障がいで十分な休息がとれていないと、すぐに働きが低下してしまうのです。

また、影響を受けるのは単純なパフォーマンスだけではなく、精神的なストレスを感じやすくなったり、イライラしやすくなったりと、感情面や思考面でも悪影響が現れます。人の感情や反応を読み取りにくくなり、短絡的なものの見方や感じ方をしてしまい、さらにストレスを感じやすくなるという悪循環に陥ってしまうこともあります。

このように精神的なストレスが続くと、ホルモンの分泌異常によって身体にも以下のような悪影響が現れてきます。

  • ストレスホルモン「コルチゾール」の影響で、高血圧になる
  • 新陳代謝が弱まり、体重が増えたり体脂肪率が増えたりする
  • 睡眠中に生産される抗体が減り、免疫力が低下して病気にかかりやすくなる
  • 十分に疲労を回復できないので、生活習慣病や脳卒中などの疾患につながる

そもそも、「眠らなくてはならないのに眠れない」ということ自体がストレスとなり、さらなる睡眠障がいや不調につながっていってしまうこともあります。単なるパフォーマンス低下のみならず、ヒューマンエラーによる事故を引き起こすことにもつながります。例えば、車の運転中に大きくパフォーマンスが低下すれば、生命に関わる事故を引き起こすこともあります。

単に眠れないだけだから、と軽視せず、睡眠障がいは早めに解決するようにしましょう。

睡眠の悩みはどうやって解決すればいい?

睡眠の悩みを解決するために最も大切なことは、規則正しい生活リズムによって、「この時間になったら眠る」ということを身体で覚えていくことです。とはいえ、習慣は継続して作っていくものですから、まずはストレスによって興奮・緊張した状態の身体をゆるめてリラックスさせ、眠りやすい状態を作ることから始めましょう。

良質な睡眠のためには、寝る部屋の環境づくりも大切です。例えば、寒すぎると体温を保とうとして血管が収縮し、暑くて湿度が高いと皮膚から熱が逃げていかないため、いずれも身体の奥の「深部体温」が下がらず、寝つきが悪くなります。そこで、乾燥には気をつけながら、エアコンで温度を調節しましょう。乾燥しやすい冬には加湿器を使うのがおすすめです。また、部屋の明かりは自分が不安を感じないくらいに極力暗くします。

布団に入ったら、頭頂部にある「百会(ひゃくえ)」と呼ばれるツボを押しましょう。両手の4本の指先や手のひらを使い、息を吐きながら5秒くらいかけて、気持ちいいと感じられる程度に優しく、ゆっくりと押していきます。押した後には軽く息を吸い、数回繰り返します。「百会」は心を落ち着かせてくれるツボなので、日中でも心が落ち着かないときにはぜひ刺激してみてください。

次に、ベッドの中で仰向けになったら、足を肩幅に開き、あごを引きましょう。肩の力を抜いて、両腕は身体から少し離した位置にだらんと伸ばします。手のひらは上に向け、胸を開き、背中がベッドに沈み込んでいくようなイメージで、全身の力を抜きましょう。この姿勢になったら、さらなるリラックス法として「筋弛緩法」と「腹式呼吸」を行っていきます。

筋弛緩法
身体に力を入れて筋肉を緊張させ、その後、脱力して筋肉を緩めることでリラックスする方法
手のリラックス:手をぐっと握って力を入れ、5秒くらいキープした後、脱力する
足のリラックス:足首をぎゅっと曲げてアキレス腱を伸ばし、5秒くらいキープした後、脱力する
いずれも、脱力したときの力が抜けていく感覚をしっかり味わうことが重要
腹式呼吸
深い呼吸は自律神経のうちリラックスを司る「副交感神経」に働きかける
口から大きくゆっくりと息を吐き、お腹がへこんでいくのを意識する
鼻からゆっくり息を吸いながら、お腹が膨らむのを意識する
再び、吸ったときの倍くらいの時間をかけて、ゆっくりと息を吐いていく
※口から息を吐くときは、イヤな記憶や頭に浮かぶ雑念を一緒に吐き出すイメージで、頭を空っぽにして深い呼吸を繰り返す

腹式呼吸をしながら眠ってしまっても構いませんし、気持ちが落ち着いたな、と思ったらやめて普通の呼吸に戻してから眠っても構いません。こうしたリラックス方法を行ってもどうしても眠れないときは、一度起き上がってベッドを離れてしまうのも一つの方法です。暗いところで目を閉じて横になっていると、どうしてもネガティブな思考に走りやすくなってしまうからです。

また、ベッドに入っても眠れない、という経験を繰り返すと、ベッドは眠れない場所だ、という記憶が強くなってしまう場合もあります。「とりあえず横になる」のではなく、「とりあえず眠くなるまで起きている」の方が良いでしょう。起きている間は、退屈な本を読んだり、気になっていることがあれば片付けてしまったりすると安心して寝つけるかもしれません。

もし、お腹が空いて眠れないという場合は、軽食を食べるのも良いでしょう。消化されやすいものや温かいものを、できれば眠る数時間前までに食べておくのが理想です。逆流性食道炎の方は、食後2〜3時間は横にならないよう気をつけ、できるだけ上半身を高くして眠ると胃からの逆流が起こりにくくなります。

睡眠の習慣を作るためにはどうすればいい?

根本的な睡眠習慣を作るための基本的な方法として、厚生労働省の掲げている「健康づくりのための睡眠指針2014」に記載されている「睡眠12箇条」を意識して生活しましょう。

  • 良い睡眠で、身体も心も健康に
  • 適度な運動、しっかり朝食、眠りと目覚めのメリハリを
  • 良い睡眠は、生活習慣病予防につながります
  • 睡眠による休養感は、心の健康に重要です
  • 年齢や季節に応じて、昼間の眠気で困らない程度の睡眠を
  • 良い睡眠のためには、環境づくりも重要です
  • 若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ
  • 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を
  • 熟年世代は朝晩メリハリ、昼間に適度な運動で良い睡眠
  • 眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない
  • いつもと違う睡眠には、要注意
  • 眠れない、その苦しみを抱えずに、専門家に相談を

睡眠は「量より質」だとされています。つまり、熟睡できていないのにだらだらと寝続けるよりは、短めでも熟睡できる方が良いということです。基本的には健康的な生活習慣と同じで、適度な運動とバランスの良い食生活を心がけ、朝食を抜いたり、運動不足にならないようにしたりしましょう。

ただし、運動は睡眠につく5時間以上前に済ませておきましょう。つまり、午後11時に眠るとすれば、午後6時までには運動を済ませておく必要があります。これは、運動によって脳や心臓が刺激されてしまい、かえって目が冴えて眠れなくなってしまうためです。運動を習慣づけやすい時間に固定し、軽い散歩やウォーキング、ジョギングなどの有酸素運動を行いましょう。

人間は、頑張って起き続けることはできても、頑張って眠ることはできないとされています。眠ろうと意気込むことで、かえって脳が覚醒してしまい、睡眠モードに移行できないためです。眠りたい時間に眠るためには、体内リズムを整えるための規則正しい生活リズムが重要なのです。具体的には、「毎晩同じ時間に寝て、毎朝同じ時間に起きる」ということです。

毎日、同じ時間に寝て同じ時間に起きることで、身体に「今から寝る」「今から起きる」というリズムがつき、自然に睡眠時間が固定されていきます。起きる時間や寝る時間がバラバラだと、眠気が訪れる時間もバラバラになってしまうため、眠りたい時に眠りにくくなってしまうのです。

また、ベッドの上で過ごす時間はなるべく短くなるようにしましょう。眠れないときにだらだらとベッドの上にいないことは既にご紹介したとおりですが、朝も起きたらベッドでごろごろせず、サッと起き上がってベッドを離れましょう。

眠れないとき、やってはいけないことって?

眠れないとき、寝よう寝ようと焦るのは禁物です。活動状態から眠る状態に入るためには、また、ストレス状態からリラックス状態に落ち着くためには自律神経が「交感神経」の優位な状態から「副交感神経」の優位な状態にスイッチを切り替える必要がありますが、眠ろうと頑張りすぎることによって緊張が高まり、ますます交感神経が優位な状態になってしまうのです。

寝る前にスマホやパソコン、テレビ、ゲーム機などを使うのも同じように、目からの光刺激によって脳を刺激してしまうため、控えましょう。できれば寝床に入る1時間前にはこれらの光を遠ざけ、読書などデジタルの光を使わない方法でリラックスしましょう。

また、タバコやカフェイン飲料(コーヒー、緑茶など)には目を覚ましてしまう作用がありますので、これも寝る直前の摂取は避けましょう。アルコールには入眠効果があるため、寝酒として飲んでしまう人もいるのですが、寝る前のお酒は眠りを浅くしてしまい、熟睡できなくなってしまいます。アルコールを寝酒として飲むのはやめ、時間と量に注意して適度に飲みましょう。

睡眠薬を飲んでいる場合、お酒との相性は良くありませんので、晩酌後に睡眠導入剤を飲むなど同時に摂取するのはやめましょう。ふらつきや物忘れだけでなく、異常な行動をとってしまうなど、副作用が強く出やすくなります。睡眠薬を飲むときは、お酒を控えましょう

おわりに:ストレスで眠れないときは、身体の緊張をほぐしてリラックスしよう

うつ病患者さんの約8割が何らかの睡眠障がいを抱えている、と言われるほど、精神的なストレスと睡眠障がいには密接な関係があります。これは、ストレスで分泌される「アドレナリン」というホルモンが脳や身体を興奮状態にし続けるからだとされています。

そこで、ストレスで眠れないときは、身体や脳をリラックスさせることが重要です。また、根本的な解決方法として、規則正しい生活リズムを作るのも同時に行っていきましょう。

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