血便とは?何が原因で起きるの?
血便とは、文字通り血液が混ざった状態で排泄される便のことで、混ざっている血液の色によって出血場所がある程度わかります。これは、血液が胃酸と反応したり、長時間排出されないまま体内を通過したりしていると黒色に変化するためで、赤い血液が混ざっている場合は肛門や大腸から、黒っぽい血液が混ざっている場合は胃や食道、十二指腸からの出血だと考えられます。
また、検診などによってわかる「便潜血」とは、肉眼で出血がわからなくても、便にごくわずか血液が混ざっている状態です。便潜血が陽性の場合、ほとんど肛門の痔からの出血と考えられますが、3〜4割の人では大腸ポリープが発見され、3〜4%の人には大腸がんが見つかることがあります。
血便の原因として考えられる疾患には、主に以下のようなものがあります。
- 大腸ポリープ
- 大腸の粘膜がいぼ状に隆起した組織で、便が通過するときにポリープの表面が傷ついて出血する
- ポリープが大きくなるほど出血のリスクが高まるが、ほとんどは出血することなく大きくなり、大腸がんへと進行する
- 便潜血検査でも見つかることが少ないため、自覚症状のみでの診断は不可能
- 潰瘍性大腸炎
- 大腸粘膜に慢性的な炎症が起こる難病で、炎症部から出血して便に混ざる
- 粘り気の強い便が出ることもあり、しばしば「ケチャップのような」と表現される
- 白っぽい粘液とともに排便されることもあり、便の回数が増えてくるのが大きな特徴
- 大腸憩室症
- 大腸の壁が外側に向かって飛び出し、憩室ができた状態
- 憩室内での細菌感染で起こる炎症や、憩室部の血管が破れて出血する大腸憩室出血などによって血便が出たり、稀に腹痛などの症状を伴ったりすることがある
- 憩室が多いと大腸内視鏡の管腔が細くなったり、便が引っかかりやすくなったりして、便通が不安定になることがある
- 腹痛をあまり伴わない憩室からの出血は大量なことが多く、真っ赤〜赤紫色の大量の出血があれば憩室出血が疑われる
- 入院治療が必要な場合が多いため、出血量が多いと感じたらすぐに病院へ
- 大腸がん
- 大腸に発生する上皮性の悪性腫瘍で、便が通過するときに腫瘍を傷つけて血液が混ざる
- 黒っぽい便が特徴で、少量の出血を伴うことがあるが、ほとんどは肉眼で確認できない
- 急に便が出にくくなったり、下痢になったりすることもある
- これらの症状が出現した場合、大腸がんがかなり進行しているケースが多いので、すぐに検査が必要
- 虚血性大腸炎
- 腸管の血液循環が悪化し、ただれや潰瘍などの炎症が起こる疾患
- 腹痛や血便、下痢などの症状を伴う
- 突然発症することがあり、左下腹部に強い痛みを感じる場合が多いが、感じないことも
- 腹痛出現後、突然赤紫〜真っ赤なものが大量に排泄されるケースが多い
- いぼ痔
- 排便時、肛門にできた「いぼ」から出血し、便に付着するもの
- 外側にできる外痔核の場合、痛みを伴うこともある
- 切れ痔
- 肛門付近で皮膚が切れ、血液が便に付着する。排便時に強い痛みを伴うのが特徴とされるが、無症状の場合がほとんど
- トイレットペーパーに鮮やかな色の血がつくことが多く、便器の壁一面につくような大量の出血に至る場合も
このように、血便は大腸がんなどにつながる重篤な疾患の症状の一部である場合もあれば、いぼ痔や切れ痔など肛門の問題である場合もあります。
ストレスで血便が出ることはあるの?
ストレスと血便に直接的な関係はありません。ですから、ストレスを受けたときに必ずしも血便が出るとは限りません。しかし、ストレスが原因となって発症する「過敏性腸症候群」によって下痢が酷くなり、慢性的な下痢によって肛門部から出血してしまう場合があります。排便回数が増えてペーパーで拭く回数が増えることで、炎症や出血に至ることもあります。
「過敏性腸症候群」とは、腸の働きそのものには何も異常がないのにも関わらず、腹痛を伴う下痢や便秘が続く疾患です。下痢で通勤途中に何度もトイレに駆け込んだり、便秘でしばしばお腹が痛くなったりするようなら、過敏性腸症候群かもしれません。胃腸の働きは特にストレスの影響を受けやすいので、ストレスから過敏性腸症候群を発症する人が多いのです。
ストレスを受けると、自律神経のバランスが崩れ、ストレスに対抗するための「交感神経」の働きが強くなります。すると、自律神経のもう片方である「副交感神経」によって活性化される胃腸の働きが弱まってしまいます。このため、ストレスを受けると胃腸に悪影響が起こりやすいのです。ストレスで免疫力が低下すると、細菌感染から痔を引き起こすこともあります。
過敏性腸症候群は仕事でもプライベートでもストレスを抱えやすい20〜40代に多く、過労や睡眠不足、不規則な食生活、不規則な排便習慣などが誘因となる場合もあります。特に、排泄に必要な大腸の蠕動運動も自律神経がコントロールしていますので、ストレスによってスムーズな排便ができなくなってしまうこともあるのです。
また、精神的ストレスからくる胃炎のほとんどは、胃粘膜の表面が赤くただれる程度の軽い胃炎なのですが、中には「急性胃粘膜病変」という重篤な疾患を発症してしまう場合もあります。この場合は胃の痛みに加えて吐血や真っ黒いコールタールのような便が出て、強い貧血で倒れてしまうこともあります。
胃の内視鏡検査を行うと、若い人では胃の出口を中心に多発する胃粘膜の出血やただれ、または多発する急性胃潰瘍が見られます。現代社会では多くの人が何らかのストレスを抱えているもので、ストレスを完全に消し去ることはできないのですが、適度にストレスを解消したり、軽減したりする工夫は必要です。
さらに、強いストレスや長期間のストレスを受けるとがんにかかるリスクが高くなることもわかっています。ラットによる実験でも、ストレスをかけられたラットはそうでないラットに比べて明らかにがんの発生率が高くなりますが、同様の現象が人間でも見られたという報告があります。その理由の一つとして「免疫力の低下」が挙げられます。
受けたストレスを解消しようと飲酒量や喫煙本数の増加、過食などに走ってしまう場合もありますが、これら生活習慣の乱れから生活習慣病を発症したり、悪化させたりしてしまうケースも珍しくありません。ストレスはがんだけでなく高血圧や糖尿病のリスクを高める危険因子であることも知られていますので、ストレスが大腸がんのリスクを高めることは間違いないでしょう。
病院に行ったほうがいい便の特徴は?
以下のような便や出血があれば、できるだけ早く病院で検査を受けましょう。
- 便に赤い血のようなものが混じっている、付着している
- お尻を拭いたペーパーに血がついている
- 月経の時期でもないのに、下着が血で汚れた
- 粘り気のある血のような便が出た
- 緩い便の中に、赤っぽい色が混じっている
- 排便後、便器に血が付着している
- 真っ黒い便が出た
便に混じる血液は真っ赤なものとは限りません。最初にご紹介したように、胃や十二指腸などの上部消化管から生じた血液は胃酸と反応したり、体内を長時間通過してきたりするため酸化して黒っぽくなっています。普段の便とはどうも違うようだ、と感じたら、早めに病院で検査を受けましょう。
便に混じっている血液の色によって、消化管のどの部分から出血したのかが大まかにわかります。
- 赤い鮮血
- 肛門に近い大腸(下行結腸よりも後ろの部分)で出血したもの
- 大腸がん、大腸ポリープなどが考えられ、ポリープや組織に擦れて出血したものと考えられる
- 色褪せた黒っぽい血液
- 盲腸から横行結腸あたりで出血していて、大腸がんやポリープの可能性が高い
- 有形便に血が混じっている
- 大腸に炎症が起きてびらんや潰瘍ができ、粘血便を起こす潰瘍性大腸炎
- または、口腔から肛門まで全ての消化管に起こりうる炎症性疾患「クローン病」、大腸ポリープ、大腸憩室症などが考えられる
- 下痢便に血が混じっている
- サルモネラ菌、腸炎ビブリオなどの食中毒によるもの、赤痢などが考えられる
- 薬剤の副作用で起こる「薬剤性腸炎」の可能性も
- タール便
- 小腸から上の部分で出血した場合、黒い色をした血便となり、鼻をつくような鋭い悪臭を放つ
- 真っ黒なタール便が出る場合、かなり大量の出血があったと考えられる
- 食道静脈瘤、胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍
食道静脈瘤とは、肝硬変などが原因で起こる疾患で、胃の噴門部と食道の静脈が次第に拡張し、弱い部分が膨らんだ状態になったものです。硬い食べ物を食べたり、咳をしたりといった刺激が引き金となり、膨らんだ部分が破れて大出血を引き起こすことがあります。この場合、タール便よりも前に吐血することが多く、しかも出血が大量なため非常に危険な状態となります。一刻も早く病院で処置を受けましょう。
胃がんや胃潰瘍、十二指腸潰瘍で真っ黒なタール便が出る場合、かなり重症に進行している可能性があります。特に、高齢者で胃潰瘍を発症した場合、血管の多い胃の後壁にできやすく、大量出血を引き起こすことがあります。胃潰瘍や十二指腸潰瘍で大量出血した場合も、食道静脈瘤と同じように吐血が起こりますので、すぐに消化器科で治療を受けましょう。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍の場合、空腹時や夜中にしくしくと痛んだり、焼けるように痛んだりすることがあります。十二指腸潰瘍の場合、空腹時に背中が痛むこともあります。一方、胃がんの場合は胃の不快感、痛み、胸焼け、食欲不振などの症状が現れます。普段からこうした症状がある場合、日頃から便の色に注意しておき、普段と違う色をしていたらすぐに病院に行くのが良いでしょう。
また、タール便と似たような色の便に、貧血の治療などに用いられる鉄剤やある種の下痢止め薬を服用することで出る真っ黒な色の便があります。しかし、これは薬によって便が黒くなっただけですから、血便ではありません。薬による黒色便の場合、タール便のような悪臭がありませんので、そこで見分けることができます。
おわりに:ストレスと血便に直接の関係はないが、がんなどのリスクを高める
ストレスと血便に直接の関係はありませんが、ストレスから過敏性腸症候群を引き起こして肛門付近から出血することがあります。また、ストレスはがんや生活習慣病のリスクを高めるため、大腸がんにかかりやすくなってしまいます。
特に、鼻につく悪臭のあるタール便が出る場合は胃や十二指腸の潰瘍、がんなどが考えられます。吐血に至らない場合でも、便の色が普段と違うと感じたら早めに病院で検査を受けましょう。
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