育児中の保護者にとって、リフレッシュは非常に重要です。核家族化が進行する現代日本において、子どもと保護者だけで1日中過ごしているケースは多く、保護者の育児疲れが深刻な社会問題にも発展しています。
保護者がリフレッシュし、また育児に戻っていくためには、一時保育を使うのがおすすめです。予約がとれないときの対処法についてもご紹介しますので、ぜひチェックしてください。
一時保育とは?
一時保育とは、「一時預かり」「一時預かり事業」とも呼ばれ、家庭で保育を受けるのが難しい乳幼児または幼児を対象として、保育所やその他の施設で一次的に必要な保育を行うことを指します。一時保育を利用できる施設は「保育園・幼稚園・認定こども園」などのほか、商業店舗やスポーツ施設の託児所、地域型保育園、児童館なども挙げられます。
地域型保育園には、家庭への訪問で行う保育事業(いわゆるベビーシッターなど)も含まれ、保護者の代わりにシッターなどが一時保育をすることも可能です。上記の施設以外にも、自治体が運営する「ファミリー・サポート・センター」という地域における「相互援助組織」などがあれば、一時的に預けることができます。
相互援助組織とは、預ける側である乳幼児や小学生などの子育て中の「依頼会員」と、預かる側である子どもの保育活動の援助を希望する「提供会員」によって構成され、自治体のアドバイザーが連絡や調整を行う、というシステムです。言うなれば、一時的に知り合いに子どもを預ける行為を自治体側が主導し、子育てを地域で支援していこうという取り組みです。
利用料金は各施設の利用時間や保育内容によって異なり、条件によっては幼保無償化の対象となることもあります。必ず、利用する前に料金形態をしっかり確認しておきましょう。
一時保育の目的としては、仕事・就職活動・通院・病児保育などのやむを得ない事情のほか、親の介護や冠婚葬祭といった必要な用事はもちろん、兄弟の習い事といったちょっとした用事、リフレッシュ目的での利用も認められています。
- 一時保育の目的①:仕事
- 保護者が就業していると、急な仕事や残業で一時保育を利用することも多い
- 普段預けている幼稚園や保育園が休園しているときなど、一時的な預け先が必要になることも
- 待機児童が多い都市部では、週に数回のパートを始めたときに預け先が見つからず、定期的に利用するというケースも
- 一時保育の目的②:就職活動
- 家計の事情、復職希望など、就職活動のために一時保育を利用する保護者も
- 一日制や時間制などさまざまなパターンがあるため、一時保育は活用しやすい
- ハローワークの中には、「安全サポートスタッフ(保育士)」を配置している施設もあるが、一時保育という枠組みではない
- 仕事の紹介や就職活動に集中したい、というときにはぜひ一時保育の利用を
- 一時保育の目的③:傷病などの通院
- 保護者や兄弟姉妹が病気や怪我になったとき、一時保育が必要になることも
- 混雑している病院も多く、どのくらい時間がかかるかわからないとき、病気ではない子どもを連れていけない場合もある
- あらかじめ一時保育の延長対応を行っている施設をいくつかピックアップしておくとよい
- 一時保育の目的④:病児保育
- 子どもが熱を出したり、体調が悪くなったりしたとき、いつもの幼稚園や保育園に通園できないことも
- 条件があるものの、病児を受け入れている一時保育もある
- 経済的な理由などで病児につきっきりでいられないとき、一時保育の病児保育を利用するケースも
- 一時保育の目的⑤:親の介護
- 介護と子育てを同時に行っている保護者の場合、気力や体力が持たないことも
- 介護の内容によっては、病院の付き添いや食事・トイレの援助など時間がかかることも
- 一時保育で子どもを見ていてもらえば、保護者の安心や負担軽減につながる
- 一時保育の目的⑥:冠婚葬祭
- 結婚式やお葬式などの行事があるとき、子どもを連れていくのが不安なことも
- 走り回ったり泣き出したりして迷惑をかける不安から、参列を諦めることもある
- 一時保育を利用すれば、安心して参列できる
- 一時保育の目的⑦:何らかの用事
- 兄弟の習い事や買い物など、さまざまな用事の際の負担軽減もOK
- 各家庭にはさまざまな事情があるので、保護者の負担軽減に一時保育を利用しよう
- 一時保育の目的⑧:リフレッシュ
- 子育てに疲れてしまったり、子どもと密着しすぎたりしてストレスを感じる保護者が多い
- 核家族化が進むと、上記のような悩みがあっても孤立してしまう人も多い
- こうした理由から、リフレッシュ目的での一時保育利用が推奨される
- 近年では、美容院やネイルサロンなどに併設された一時保育サービス事業も
リフレッシュ目的で一時保育を使ってもいいの?
前述のように、一時保育をリフレッシュ目的で利用することは、れっきとした保護者の権利として認められているものです。実際に、厚生労働省と文部科学省が定めた「一時預かり実施要綱」にも以下のような記載があります。
育児疲れによる保護者の心理的・身体的負担を軽減するための支援が必要とされている
つまり、身体に負担がないと本人が思っていても、心理的な負担を感じているとき保護者がリフレッシュのために一時保育を利用することは、国からも後押しされているわけです。しかし、一方で一時保育のリフレッシュ利用を悩む人も多く、例えば以下のような意見が寄せられています。
- 後ろめたさを感じる
- 仕事や介護で一時保育を利用する人が多い中、リフレッシュ目的での利用は気が引けるというケース
- 予約が取りづらい
- 待機児童が多い地域などでは、一時保育の予約が取りづらい場合がある
- 地域の状況によっては、リフレッシュ目的の利用は仕事や介護より緊急性が低いと判断されてしまい、利用登録まで時間がかかるという人も
- 利用までに時間がかかる
- 利用できる施設を調べたり、問い合わせたりするのに手間がかかる
- 料金設定、利用方法、持ち物などがそれぞれ異なるなど、手間がかかるケースも
- 慣れるまでに時間がかかる
- 定期的に通うものではないので、子どもによっては環境に不安を感じてしまうことも
- 園開放など、自由に保育園で遊べる日にあらかじめ保護者と一緒に行っておき、慣れるような工夫をするのも一つの手
このように、心理的な負担を感じる人もいれば、予約が取りにくい、時間がかかるといった実際的な負担を抱える人もいます。待機児童の多い地域では、時間がかかる上に心理的な圧迫を感じてしまう人も多いのではないでしょうか。しかし、家事にも育児にも大変な保護者にとって、気持ちにも体力にも余裕を取り戻すことは非常に重要なことです。
「子どもを預けて自分がリフレッシュするなんて、親としての自覚がないのではないか」「子どもが可哀想なのではないか」と自分を責めてしまう保護者や、批判的な意見も多いのですが、全くそんなことはありません。むしろ、子どもによりよく向き合うために、リフレッシュの時間は積極的に作るべきとも言えるでしょう。
実際に、リフレッシュ目的で一時保育を利用した保護者からは「市の保育園に一時保育で預けたら、とても良い息抜きになった」「疲れや寝不足で見失いそうになっていた子どもへの愛情を再確認でき、赤ちゃんにも良い刺激になった」「育児に余裕が持てるようになった」というプラスの意見が多く寄せられています。
一時保育をリフレッシュ目的で利用したいと思った理由や、その頻度については以下のような意見も見られます。
- 家事と育児の息抜き
- 子どもの成長に応じ、保護者以外の刺激と息抜きを兼ねて月に1回くらい利用する
- 子どもにとっては、同年代の友人と遊ぶ機会にも、集団生活を体験できる機会にも
- 保護者のリフレッシュにもなるが、子どもの楽しみにもなる
- 一人の時間がほしい
- 家事と育児に追われる毎日で、リフレッシュのために2ヶ月に1回利用する
- 子どもが産まれると子ども中心の生活になるため、なかなか一人の時間が取れない人も
- 一時保育で気持ちに余裕ができ、子どもと笑顔で関われるようになった
- 用事を済ませたい
- 検診や病院受診など、自分の用事を済ませるために3ヶ月に1回くらい利用する
- 子どもが産まれると、保護者はどうしても自分のことを後回しにしてしまう
- 一時保育を利用すれば、子どもの様子や生活リズムを気にせず用事を済ませられるので、良いリフレッシュになる
子どもを保育施設に預けてしまうことに後ろめたさを感じる人もいますが、上記のように一時保育でリフレッシュし、気持ちに余裕ができてまた子どもと笑顔で向き合えるメリットの方が大きいでしょう。子どもは、案外敏感に保護者の精神状態を察しているものです。保護者が心身ともに疲れているときには、ぜひリフレッシュのために一時保育を利用してみましょう。
こんなときは育児疲れ?セルフチェックしてみよう
育児疲れや育児うつという言葉が一般に浸透して長いですが、自分ではその状態に気づいていない人もまだまだ多いのが現状です。そこで、以下の12項目をセルフチェックしてみましょう。
- なぜか、突然涙が出てくる
- すぐにイライラしてしまう
- 以前まで好きだったものに、興味が持てなくなっている
- 気分が落ち込んだり、憂鬱になったりする
- 疲れた感じがあって、やる気が出ない
- 疲れていて眠れる状況なのに、なかなか眠れない
- 食欲がない、もしくは異常に食べすぎる
- 保護者としての資格がないようで、自分が許せないと思う
- 家事や育児に集中することができない
- 誰にも会いたくないと感じる
- 子どもが可愛いと思えない
- この世から消えてしまいたい
もちろん、1つ2つくらいは誰にでもあることでしょうが、しばらくしたらもう一度チェックしてみましょう。その状態が2週間以上続いていたり、症状が深刻化していたり、チェック項目が増えていたりしたら、無理せず早めに専門の医療機関を受診しましょう。
また、受診の結果として育児うつなどの発症が見られなかったとしても、チェック項目が多い人や深刻化している人は、適度に一時保育を使ってリフレッシュしていきましょう。
一時保育の予約がとれないときにできる対策は?
一次保育の予約が取れないときには、まず以下のような工夫がおすすめです。
- 受付時間と同時に申し込む
- 事前に申し込み開始日を確認し、受付時間と同時に予約の電話をかける
- 自治体や保育園など施設によってさまざまなルールがあるので、預けたい場所の情報をよくチェックする
- 当日や当月は、予約でいっぱいになってしまっていることも多い
- 視野を広げて預け先を探す
- 近所だけでなく、家から少し離れた施設など、視野を広げると預け先が見つかることも
- 送り迎えできる範囲で、あらかじめいくつか候補を挙げておくと安心
- 保育園の一時保育の予約がとれないときは、民間の一時預かりサービスの検討も
- キャンセル枠がないか確認する
- 一時保育をキャンセルした人がいた場合、空いた枠に入れることがある
- 申し込みが終わった後でもこまめに確認したり、当日に急な一時保育が必要になったりしたときにはぜひ確認したい
また、保育園や自治体での一時保育の予約がとれなかったときは、以下のような預け先を利用するのもおすすめです。
- ファミリー・サポート・センター
- 地域の会員が子どもを預かってくれるので、親しみやすく話しやすい
- 利用には事前の会員登録が必要なので、登録内容などを確認しておく
- ベビーシッターサービス
- 保育士も登録しているベビーシッターサービスなどを使う人も
- ベビーシッターに来てもらって子どもと留守番していてもらう場合、自宅なので子どもが不安になりにくい
- 初めてサービスを利用するときは、友人やネットの口コミを重視する人も
- 託児所
- 認可外の保育施設である託児所のうち、一時保育に対応している施設を利用する
- 託児所によっては定期利用のみで運営しているところもあるので、よく確認する
- 祖父母や親戚
- 近所に住む子どもの祖父母(両親や義両親)、親戚などに預かってもらうのも手
- 預けるほか、自宅に来てもらう方法もある
このように、保育園や自治体にこだわりすぎなくても、一時保育の形態にはさまざまなものがあります。ぜひ、利用しやすいサービスを適宜利用し、育児中の保護者の心身の負担を減らしていきましょう。
おわりに:一時保育をリフレッシュ目的で利用し、保護者の負担を軽減しよう
一時保育は仕事や介護など、やむを得ない事情がないと利用しにくいと思っている人も多いのですが、国からも後押しされているように、保護者の身体的な負担だけでなく、精神的な負担を軽減することも一時保育の重要な目的です。
ですから、リフレッシュしたいときには堂々と一時保育を利用しましょう。また、一時保育の予約がとりにくいときには、予約の仕方を工夫したり、他の預け先を探したりするのもおすすめです。
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