お酒を飲むと開放的な気分になったり、リラックスできるようになったりする人は多いです。また、泣き上戸や笑い上戸などという言葉があるように、普段は抑えている感情を出せるようになる人もいます。
このように、お酒でリラックスできるのはなぜなのでしょうか。また、楽しく飲むためには、どんなルールを守っておけば良いのでしょうか。お酒の効果について、いま一度確認しておきましょう。
- この記事を読んでわかること
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- お酒が持つリラックス効果の秘密
- お酒の適量と飲み過ぎのデメリット
- すぐに役立つ二日酔い対策
お酒を飲むとリラックスする、楽しくなるのはなぜ?
適度の飲酒は気分を良くし、以下のようなリラックス効果やストレス解消に役立ちます。
- リラックス効果
- 心身の緊張が和らぎ、リラックスできる
- 一時的な軽いストレスなら、お酒を飲んで発散することもできる
- 人間関係を円滑に
- お酒を飲むと気分が盛り上がることから、コミュニケーションツールにも
- 人間関係を円滑にする手助けとして、お酒を使う人もいる
- 疲労回復
- アルコールは血管を拡張させ、血行を良くする働きがある
- 利尿効果もあるため、適量なら身体に溜まった老廃物を排出でき、疲労回復に役立つ
お酒を飲んでリラックスできるのはなぜ?
そもそも、お酒を飲んで気持ちがリラックスできるのは、アルコールによって「理性の座」とも呼ばれる「大脳新皮質」の働きが鈍くなるからです。理性を司る大脳新皮質の働きが弱まると、感情・衝動・食欲・性欲などの本能的な情動を司る「大脳の旧皮質や辺縁系」の働きが活発になり、精神的に高揚し、元気が出てきます。
また、ワインやウイスキーの香りにはリラックス効果があり、ビールの原料であるホップの香りには気分を落ち着かせるなどといったアロマ効果がありますので、これらの香りによっても気持ちを穏やかにしたり、リラックスさせたりしてストレスを解消する効果が期待できます。もちろん、自分のペースでゆっくりとお酒を楽しむことが一番なのは言うまでもありません。
お酒を飲んで楽しくなれるのはなぜ?
お酒を飲むと、リラックスできるだけではなく楽しい気分も湧いてきます。これは、楽しさや心地よさなどを引き出す「ドーパミン」という神経伝達物質の分泌が促されるためで、通常はなにか興味のあることをするなどして「楽しい」と感じたときに分泌されるのですが、アルコールによってもドーパミンの分泌が促されることがわかってきました。
また、平常時はドーパミンが分泌されたとき、楽しいという感情で興奮しすぎるのを防ぐために気持ちを穏やかに抑える「GABA」などの脳内物質も分泌されるのですが、アルコールはこうした気持ちを穏やかにする物質の分泌を抑えたり、働きを鈍らせたりしてしまうため、気分はどんどん盛り上がっていくのです。
さらに、アルコールは「セロトニン」という過剰な動きや不安・恐怖などの感情を抑えて気持ちを鎮める脳内物質の分泌を促す働きもあります。セロトニンはうつ病の治療薬にも使われるほど、不安や恐怖を抑えて気持ちを落ち着かせられる物質です。
他にも、アルコールは身体を緊張させて心拍や血圧を上げる副腎皮質ホルモンや、ノルアドレナリンなどの分泌を抑えて心身の緊張を解きほぐす働きを持っています。そのため、アルコールを飲むと楽しい気分が続いたり、不安や恐怖などのマイナスの感情やストレスによる緊張を感じにくくなったりするのです。
適量のお酒は身体にいいって本当?
適量のお酒は身体に良い、と考える根拠になった調査結果を「Jカーブ」と言います。これは、1981年にイギリスのマーモット博士が発表したもので、正確には「飲酒と死亡率のJカーブ効果」という疫学調査によります。調査結果によれば、毎日適量飲酒する人は、全く飲まない人や時々飲む人に比べて、心筋梗塞などの冠動脈疾患による死亡率が低い傾向にありました。
一方で、毎日大量に飲酒する人やアルコール依存症の患者さんでは、冠動脈疾患による死亡率は極端に高くなっています。この数値をグラフに表すと「J」の字に似たカーブを描くことから、「Jカーブ効果」と呼ばれています。
他にも、公益社団法人アルコール健康医学協会が冠動脈疾患などの病気のみならず、事故や事件を含めたあらゆる原因による死亡率と1日の飲酒量の関係を調べた結果でも、やはりお酒を全く飲まない人と比べて、適量飲酒する人では死亡率が低くなるというJカーブ効果が見られました。
とはいえ、これは個人のアルコールに対する耐性や年齢、健康状態によっても異なりますので、どんな人でもお酒を飲めば必ず死亡率が下がる、というわけではないことに注意が必要です。それぞれに合った飲酒量や飲酒の仕方を心がけましょう。もちろん、お酒を飲まない人や飲むのが苦手な人、体質的にアルコールを分解できにくい人にまでアルコールを勧めるものではありませんので、無理にアルコール摂取を促すのは絶対にやめましょう。
また、適量の飲酒は身体に良いのですが、大量に飲酒してしまうことは心にも身体にも悪影響を及ぼします。具体的には、以下のようなことがデメリットとして挙げられます。
- 記憶力・判断力の低下
- お酒を飲みすぎると、記憶力や判断力が低下することがある
- 判断力が低下すると、取り返しのつかない失敗や事故につながることも
- 二日酔い
- 飲みすぎてしまった翌朝には、頭痛・吐き気・疲労感などの二日酔いに悩まされる
- ひどいときには、翌日をまる一日台無しにしてしまうことも
- 病気の原因になる
- 長期間にわたって大量に飲酒していると、さまざまな疾患の原因になる
- 脂肪肝や肝硬変などの肝臓障害や、糖尿病・脂質異常症・高血圧といった生活習慣病などを引き起こす
つまり、お酒は翌日に影響しない程度の適量を守り、自分のペースで楽しく飲むことが何よりも大切だと言えるでしょう。
お酒を楽しく飲むために守ったほうがいいルールとは?
前述のように、飲み過ぎやあまりにハイペースでの飲酒はさまざまな悪影響を引き起こす可能性が高いことがわかっています。ですから、まずは適量をしっかり守ることを心がけましょう。厚生労働省が推進する「健康日本21」によれば、「節度ある適度な飲酒量」とは、純アルコールで1日あたり平均約20g程度とされています。これは、主な酒類で表すとそれぞれ以下のような量です。
- ビール:中瓶1本(500mL)
- ワイン:グラス2杯弱(200mL)
- 日本酒:1合(180mL)
- 焼酎:ぐい呑み2杯弱(100mL)
- ウイスキー:ダブル1杯(60mL)
さらに、一般的に女性は男性に比べてアルコールの分解速度が遅いことから、上記の1/2〜2/3程度が適当であるとされています。これに加えて、週に2日は連続した休肝日を設け、肝臓がしっかり回復する時間をとりましょう。
また、「寝酒」と言って睡眠薬代わりにアルコールを摂取する人がいるのですが、これは避けた方が良いでしょう。飲酒後の睡眠は質が悪くなり、眠りが浅くなってしまうため、夜中や早朝に目を覚ましてしまうことが多くなってしまうのです。さらに、寝酒の習慣を続けていると身体がアルコールに慣れてしまい、だんだんと飲酒量を増やさないと寝つけなくなっていく可能性もあります。眠るためにお酒を利用するのはやめておきましょう。
お酒はあくまでも、明るく楽しく飲むものです。ストレスを抱えながら一人でお酒を飲んでいても、なかなか気分転換になりにくく、つい嫌な思いにとらわれてストレスが悪循環し、飲酒量がどんどん増えていくことにもなりかねません。ストレスが溜まったときにお酒を飲むなら、ぜひ仲間と会話を楽しみながら明るくストレスを発散できるように飲むことを心がけましょう。
アルコール依存症は誰でもなるの?ならないためにはどうすればいい?
アルコール依存症は意志の弱い人がなると思いがちですが、実は意志の強さ弱さには関係なく、お酒を飲む人なら誰でも発病する可能性があります。時間や場所を選ばずにどうしてもお酒が飲みたくなってしまい、飲み始めたら泥酔するまでやめられなくなってしまうというもので、性格まで変わってしまうのが依存症の恐ろしいところです。
症状が進むと、約束を守らなくなったり、嘘をついたり、暴力を振るったりというトラブルが増えてきますし、友人や家族など周囲の大切な人との関係も壊れていってしまいます。アルコール依存症と診断されると、一生断酒しなくてはなりません。いつまでも明るく楽しくお酒を楽しむためには、お酒と上手に付き合って行くことが大切です。
アルコールの悪影響は他にもあるの?
アルコールで生じる悪影響は、アルコール依存症や過剰な飲酒を続けたことによる生活習慣病などの疾患だけではありません。脳内物質である「NMDA受容体」がアルコールと結びつくと、新しい記憶を作る能力や学習能力が低下します。さらに、二日酔いになるほど飲みすぎると、通常の3倍もの神経細胞が死滅するという説もあります。
このように、アルコールは飲みすぎると脳に長期的な悪影響だけでなく、短期的な悪影響を与えることもあります。アルコールが与える良い影響のうち、ドーパミンの放出は飲酒開始後の約20分間だけとも言われていますので、脳のことを考えてもやはりアルコールは適量、適切な飲み方を心がけるのが良いでしょう。
二日酔いの予防&対処法は?
では、二日酔いになるほど飲みすぎないために、あるいは体調などでそれほど飲んでいないのに二日酔いになってしまったという事態を防ぐために、どんなことに気をつければ良いのでしょうか。飲み始める前、飲んでいる間、飲んだ後、そして二日酔いになってしまったときの対処法までを順番にご紹介します。
飲み始める前にできる二日酔い予防対策とは?
アルコールを飲み始める前にできる対策は、「栄養ドリンクを飲むこと」「なにか食べること」の2つです。二日酔いを予防するための栄養ドリンクは非常に多く販売されていますが、その中には「アルコールの分解を促進するもの」と「アセトアルデヒドの分解を促進するもの」の2種類があります。
アセトアルデヒドとは、アルコールが分解された後にできる物質で、二日酔いの原因となる物質です。そのため、アルコールそのものの分解を促進するドリンクよりは、アセトアルデヒドの分解を促進するドリンクを飲んだほうが二日酔いになりにくいです。ただし、アルコールにもともと弱い体質の人や、毎日アルコールを摂取していて既に肝臓がダメージを受けているという人の場合は、アルコールの分解を促進するドリンクを選びましょう。
逆に、普通の人がアルコールの分解を促進するドリンクを飲んでしまうと、アルコールで気分が良くなる時間が短縮されてしまうため、余分にアルコールを飲んでしまう可能性が高くなります。アセトアルデヒドの分解を促進するドリンクとして人気があるのはウコンドリンクで、その性質上、アルコールを飲む前だけでなく、飲んだ後にドリンクを摂取しても効果が期待できます。
飲む前に食べるものとしては、脂肪分や炭水化物が良いでしょう。空腹でアルコールを摂取するとアルコールの吸収速度が速くなり、二日酔いになりやすくなります。脂肪分としてはバターなど、炭水化物としてはお米や麺類などがおすすめです。胃や肝臓への負担を緩和するため、ぜひ食べてから飲むよう心がけましょう。
飲んでいる間にできる二日酔い予防対策とは?
アルコールを飲んでいる最中でも、二日酔い予防の工夫は行えます。アルコールが体内に吸収される速度を落とせば、二日酔いになりにくくなります。アルコールの吸収スピードを落とすためには、アルコールと同時に食べ物を摂取するのが効果的です。
このときは空腹にならなければどんな食べ物でも構いませんが、特にタンパク質が豊富な肉類やチーズ、枝豆などが良いでしょう。タンパク質には、アセトアルデヒドを分解するために必要な酵素を活性化させる作用があるからです。
食べ物と同時に、水やソフトドリンクをアルコールと同量摂取することで、体内のアルコール濃度が薄くなるため、より吸収を抑えられます。アルコールを飲むときにはぜひ、食べ物とチェイサーを用意し、アルコールだけを摂取しないよう気をつけましょう。また、一気飲みのような短時間でのアルコール摂取も避け、時間をかけてゆっくり飲みましょう。食べ物を食べながらゆっくり飲んでいると満腹感も得られますので、飲みすぎ防止につながります。
さまざまな種類のお酒を飲み合わせないことも、過剰摂取を避ける重要なポイントです。種類の違うお酒を交互に飲むと、味の変化で飽きずに飲み続けられてしまい、ついつい飲みすぎてしまいやすくなりますし、どの程度の量を飲んだのか判断がつきにくくなります。一度の席で飲むアルコールの種類は、せいぜい1〜2種類にしておくのが良いでしょう。
飲み終わった後にできる二日酔い予防対策とは?
飲み終わった後でも、二日酔い対策は行えます。まずは、お酒を飲み終わった後、すぐに寝てしまわないようにしましょう。就寝中は内臓機能も休止してしまいますので、アルコールが分解されにくくなり、二日酔いになりやすくなってしまいます。通常の睡眠時間よりも数時間少なくする程度で構いませんので、翌日に支障をきたさない程度に起きていましょう。
また、お酒を飲んだ直後に身体を横にするということがそもそもよくありません。胃酸が逆流を起こして胃食道逆流症を引き起こす可能性がありますので、上半身を少し上にあげた状態や、座った姿勢で3時間程度は身体を横にしないことも重要です。
せっかく起きている間には、アルコールの分解を促進させるための水やオレンジジュース、ブドウ糖やしじみの味噌汁などを摂取しましょう。水やお茶などの水分はアセトアルデヒドの濃度を薄め、体外に排出しやすくしてくれます。ブドウ糖は肝機能のエネルギー源となり、しじみはタウリンという成分によってアセトアルデヒドの分解作用を促進します。
しじみには肝機能をサポートするメチオニンも含まれているため、アルコールによって脱水状態になっている身体に水分と塩分を補給するためにも、味噌汁の状態で摂取するのが好ましいです。また、塩分と水分を同時に摂取するためには、スポーツドリンクなどもおすすめです。
オレンジジュースもまた、ビタミンCと果糖によってアセトアルデヒドの分解を促進sh知恵くれます。日頃からビタミンCのサプリメントを服用している人なら、アルコールを摂取した後にサプリメントを飲む方法もあります。サプリは薬剤ではなく栄養補助食品ですから、アルコールとの飲み合わせも心配する必要はありません。
二日酔いになってしまったらどうすればいい?
二日酔いの予防をしていなかった、もしくは予防していたけれどつい飲みすぎてしまった、などの理由で二日酔いになってしまったら、まずは水やお茶、ソフトドリンクなどで水分をしっかり補給しましょう。アルコールを分解するために大量の水分を消費しますので、身体は脱水状態になっています。脱水状態を改善し、利尿作用を促進して無害化されたアセトアルデヒドや溜まっている老廃物などを排出しましょう。
また、二日酔いのつらい症状があれば、それぞれの症状に合った対策を行いましょう。
- 頭痛
- 血管が拡がり、神経を圧迫することで引き起こされている可能性が高い
- カフェインを摂り、血管の収縮を促すと痛みが軽減されやすい
- 身体のだるさや筋肉痛
- 胃に負担がかからないもので糖分を摂取し、身体のエネルギー不足を解消する
- ブドウ糖やお粥、ソフトドリンクなどがおすすめ
- 一気に摂取すると胃食道逆流症を引き起こし、吐き気や嘔吐の原因となるため注意が必要
この他にも、汗をかくとアセトアルデヒドの分解を促進する効果が期待できますので、身体を冷やさないようにして横になるか、動けるなら温かいお風呂に入るなど、身体の負担にならない程度に汗をかくと良いでしょう。
おわりに:お酒は神経伝達物質の作用でリラックスできる。適量の飲酒を心がけて
お酒でリラックスできるのは、脳の理性を鈍らせて脳内物質のドーパミンやセロトニンの分泌を促すのに加えて、筋肉の緊張をほぐす働きがあるからです。とはいえ、過剰な飲酒は死亡率を上げたり二日酔いの原因になったりするため、適量の飲酒が大切です。
アルコールを飲む前、飲んでいる最中、飲んだ後それぞれに二日酔いの予防対策ができますので、ぜひ参考にしてください。お酒は自分のペースで楽しく、明るく飲むことが重要です。
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