何かが気になって眠れない、心配事や不安感があって眠れない、なんとなく寝付けないなど、眠りに入れないことで悩む人は多いです。このように眠れないときの多くは、体や頭が何らかの原因で緊張していて、十分にリラックスできていないことが原因と考えられます。
そこで、今回は睡眠にリラックスが必要な理由や、良い睡眠のために日頃から気をつけておくことについてご紹介します。
- この記事を読んでわかること
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- 睡眠の質の向上にリラックスが必要な理由
- 眠れなくなってしまう理由
- うつと睡眠トラブル
- 質の高い睡眠に必要なもの
- 睡眠の質の向上に役だつリラックス法
リラックスすると寝付きや睡眠の質が良くなるのはなぜ?
なかなか寝付けない、睡眠の質が悪いというとき、その原因として多く考えられるのは不安や緊張など、精神的にネガティブな要因です。つまり、以下のような何らかの心配事や考え事があると脳や体がリラックス状態にならず、眠りに入れなかったり、眠れても睡眠の質が悪くなり、翌朝起きても疲れが残ってしまったりします。
- 明日、起きられなかったらどうしようと心配になる
- 明日は大事な商談があるが、何を着ていこうか悩んでいる
- 明日は早めに出社して、プレゼンの準備をしなくてはならない
- 最近はトラブル続きで、どうしたらいいか悩んでいる
こうした心配事や悩み事があると、心身ともに安心してリラックスした状態で寝ることはできません。心地よい眠りのためには、心配事や悩み事のうち解決できることはしておき、安心して寝る準備をすることが大切です。眠りの環境を整えるだけでなく、明日起きたら何をするか、着る服や持ち物の準備まできちんと終わらせておけば、安心して眠りやすいでしょう。
他にも、夜に眠れない理由として以下のようなことが考えられます。
- 身体的な問題
- 痛み(胸痛、腹痛、下肢痛など)、咳、かゆみ、発熱、頻尿など
- 精神的な問題
- うつ病、統合失調症など
- 心理的な問題(過覚醒型不眠症)
- 精神的なストレスや不安のほか、妊娠期である、環境の変化によるなど
- ※精神疾患というわけではないが、何らかの心理面での問題を抱えている場合
- 生理的な問題(リズム異常型不眠症)
- 時差ボケ、夜間勤務で昼夜逆転している、就寝時間が早すぎるなど
- 加齢による朝型傾向
- 睡眠のための生体機能リズムが乱れやすいために起こる
- 日中の活動量が低下するため、睡眠時間をあまり必要としなくなったり、睡眠時間が浅くなったりする
- 薬による不眠
- カフェインを含む薬、ステロイド薬、抗がん剤などの副作用
また、適度な運動は寝つきがよくなるとされていますが、筋トレのような激しい運動を寝る前に行うと逆効果になってしまうこともあります。夜で休息状態になるべき脳や体が刺激されてしまい、血圧や心拍数、体温などが上昇し、活動モードに入ってしまうのです。すると、スムーズに眠りに入れなくなってしまいます。
脳や体が活動状態にあるとき、私たちの体は「交感神経」という体を活動モードに切り替える神経によってある程度緊張し、覚醒しています。これは日中、仕事や勉強をするためには非常に良い状態なのですが、覚醒状態が続くと緊張で筋肉がこわばったり、精神的に疲弊したりしてしまいます。もちろん、夜も起きたまま眠れなくなってしまいます。
一方、リラックスするときには脳の「前頭葉」と呼ばれる部位でα派が増加し、心身をリラックスモードに切り替える「副交感神経」が活性化されます。副交感神経が活性化すると、心拍数や血圧が下がり、体温が低下して心身の緊張が解れます。寝つくためにも、睡眠の質を高めるためにも、リラックスが重要なのです。
寝付けないのは精神的な理由が多いって本当?
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」によれば、睡眠障害と精神疾患やメンタル的な不調の関連性について、以下のように紹介されています。
不眠などの睡眠障害は、精神疾患で頻度の高い症状である。精神疾患、特にうつ病の初期には、患者は不眠のみを訴えることがあるので注意が必要である。うつ病の場合、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒に加え、熟睡感欠如、休息感欠如、朝の離床困難が合併してくることが特徴的である。
つまり、うつ病などの精神疾患の初期、メンタル的な不調に患者自身が気づいていない頃にも比較的生じやすく、気づきやすい症状が不眠だと言えます。うつ病の場合は寝付けない、途中で目が覚めてしまう、早く起きすぎてしまうなどの不眠症状に加え、起きたときに「ぐっすり眠れなかった」「体が休まっていない」「布団から起きられない」などの症状が加わってきます。
このように、うつ病ではかなりの確率で睡眠に関する症状や不調が現れます。また、うつ病以外のメンタル的な不調でも睡眠障害はよく見られる症状ですから、疾患の診断には睡眠障害以外の症状を加味して慎重に判断することが求められます。
さらに、睡眠がとれず十分な休養が得られずにミスや遅刻が増え、そのことに対する叱責や自責によって落ち込み、翌日もまた同じミスを繰り返してしまうのではないかと眠れなくなってしまうといった悪循環に陥ってしまうこともあります。なかなか眠れない、寝ても寝た気がしないということが何日も続くようであれば、ぜひ専門家に一度相談してみましょう。
そもそも、こうして精神的なストレスを感じることがなぜ不眠につながりやすいのかというと、ストレスによって「アドレナリン」というホルモンが分泌されるためです。アドレナリンは「ストレスホルモン」とも呼ばれ、動物が敵から逃げなくてはならないときや狩りを行うときに分泌され、心拍数が上がる、冷や汗が出る、息が荒くなるなどのストレス反応を引き起こします。
通常、ストレスが去ればアドレナリンの分泌は止まり、体は元の状態に戻りますが、ストレスが長時間・長期間に渡ると、ストレスのある状況から開放されてもアドレナリンが分泌し続け、体が常にストレス反応を起こしている状態に陥ってしまいます。つまり、休憩していても眠っていても脳や体が休まることなく活動し続けてしまうため、眠れなくなってしまうのです。
寝る直前のストレッチがリラックス&睡眠対策になる?
スムーズに寝つくため、また、質の良い睡眠を得るためには、リラックスが重要なことがわかりました。また、気持ちよく寝つくためにはもう一つ、「深部体温」というキーワードも重要です。私たちの体は、内臓のある深部の体温が上がった状態からだんだん下がっていくときに眠気が起こるようになっています。ですから、寝る1〜2時間前の入浴が望ましいのです。
そこで、入浴中や入浴後の空き時間を利用してリラックスできるようにすれば、入浴による深部体温の低下も手伝ってスムーズに入眠しやすいと考えられます。特に、仕事で長時間座ったままパソコンを使ったり、通勤時に電車で立ちっぱなしだったりすると、知らず識らずのうちに体にストレスが溜まって緊張し、肩こりや腰痛などの原因になることもあります。
筋肉が硬くなると血管が圧迫されてしまい、血液が運ぶ酸素や栄養が細胞や組織に十分に行き渡りません。そのため、血管を拡張させる物質が分泌され、体に痛みが生じるようになってしまいます。筋肉の硬直をストレッチで和らげれば、血管の圧迫を軽減し、筋肉のコリや痛みを解消できるでしょう。
また、ストレッチを行うときは以下のポイントに注意しましょう。
- リラックスした状態で、ゆっくり行う
- ストレッチは体を激しく動かすのではなく、リラックスしてゆっくりじっくり行う
- 寝る前なので、スマホやパソコン画面を見ながらのストレッチは避ける
- ※電子機器の明かりで交感神経が刺激され、副交感神経が活性化されない
- 時間をかけて呼吸しながら行う
- ストレッチをするときは、息をゆっくり吐きながら筋肉を伸ばす
- 呼吸を止めると、筋肉が緊張した状態になってしまうのでNG
- 無理はせず、気持ち良いと感じられる強さで
- 人によって、体の柔軟性や関節の動く範囲はさまざま
- 必要以上に体に負荷をかけてしまうと、関節や筋肉の損傷にもつながってしまう
- ゆっくり徐々に筋肉を伸ばしていき、痛みを感じる一歩手前の気持ちよさで止める
- 部屋の照明を暗めにする
- 日が沈んでもテレビやスマホ、パソコンなどの照明に囲まれていると、体が昼夜の区別をできないことも
- 寝る前のストレッチでは、照明を暗めにして体を休ませる環境を整えて
リラックスするためのストレッチは、お風呂で行うもの、寝室で行うもの、布団に入ってから行うものの3つに大きく分けられます。順に見ていきましょう。
お風呂で行うストレッチって?
お風呂の水圧で末端の毛細血管から血液が戻ってきたり、各臓器に溜まっていた血液も流れたり、と最も血行が良くなっているときには、首の後ろをゆるめましょう。ここは血管が集まっている場所なので、温めながらほぐすことで効率的に血行を良くし、深部体温を上げられます。ここで深部体温を上げておけば、寝るときスムーズに下がりやすくなるでしょう。
- 湯船に首を沈めて浸かる。シャワーのときはシャワーヘッドを固定し、少し熱めのお湯をうなじに当てる
- 親指以外の指を組み、うなじ横のくぼみに親指を当て、手をゆっくり上下に動かして首筋をほぐす
- 1分間を目安に行い、首のコリをほぐす
このとき、強く押しすぎてしまうと逆効果なため、指は優しく動かしましょう。
寝室で行うストレッチって?
体を起こした状態で行うストレッチとしては、「股関節の周りをほぐすストレッチ」と「腕回しストレッチ」の2種類があります。
股関節の周りをほぐすストレッチ
- 床の上にあぐらの状態で座る
- 両足の裏を合わせ、両手で足を包むように持つ
- 息をゆっくり吐きながら、背筋を伸ばしつつ上体を前に倒す
- 背筋が丸くならないところまで倒し、その姿勢を保ちながら呼吸を続ける
- 肘で太ももの内側を押し、股関節の周辺を伸ばす
このストレッチでは、胴体と足の間を結び、体を支えている股関節を柔らかくします。1分を1セットとし、合計3セット行いましょう。
腕回しストレッチ
- 腕を曲げ、脇を開く
- 体の横にある肘を上にあげ、そのまま後ろに向かって大きくゆっくりと回していく(肩甲骨を寄せるように)
- 肘を体の前まで回し、手を組み、返すようにしながら前方に腕を伸ばす
- その後、腕を頭の上まで持ち上げてぐっと伸ばし、2〜3秒キープしてから下ろす
このストレッチでは、肩の大きな関節をほぐしていきます。1分間で上記の流れを5〜6回繰り返しましょう。
布団に入ってから行うストレッチって?
布団に入ってから、横になった状態でもストレッチを行えます。気持ちいい状態のまま眠れるので、寝る準備を整えて照明を消してから行いましょう。
- 背伸びで全身をゆるめる
- 仰向けになり、バンザイをするように両手を上に伸ばす
- ゆっくりと両手・両足を伸ばしながら、背伸びをする(手と足の指先が上下に引っ張られるようなイメージで)
- 伸ばした状態を30秒キープし、力を抜く
- 手足の力を抜く
- 仰向けになり、両手・両足を天井の方に向ける
- 力を抜いた状態で、両手・両足をブラブラさせる
- 30秒で1セット、合計2セット行う
- 足首を曲げて深呼吸
- 3秒くらいかけて鼻からゆっくり息を吸いながら、両足首を手前に起こす
- 口をすぼめ、、3〜5秒くらいかけて口から息を吐きながら、両足首を元の位置に戻す
- ※このとき、息を吐ききると同時に、ふくらはぎと足首から力を抜く
- 上記の流れを5〜6回繰り返す
全身のストレッチでは一日の体の緊張をほぐすイメージ、手足のストレッチでは腹直筋や大殿筋、大腿四頭筋など姿勢を保つために働く筋肉を休ませるイメージです。足首のストレッチで足の血行を良くすると、熱が放散されますので深部体温が下がりやすくなり、さらに深呼吸で副交感神経が優位になってリラックスできるでしょう。
このように、寝る前に行うストレッチを決めて習慣づけておくと、ストレッチ自体が「これから眠る」という条件づけにもなり、ストレッチを行うと条件反射的に眠りに入りやすくなります。旅行や出張に出かけたときなど、寝つきにくい場合でも眠りやすくなりますので、ぜひ試してみましょう。
寝る直前にもできる、簡単なリラックス法があるの?
ストレッチをする時間がないという人でも、寝る前の数分間を使って簡単にリラックスできる方法があります。いずれも寝転がった状態で行いますので、いつでも寝られるように、部屋の温度や湿度は快適な状態に保ち、部屋の明かりは自分が不快さや不安感を感じない程度の暗さまで落としておきましょう。
- リラックスするツボ(百会)
- 頭頂部にある「百会」というツボは、心を落ち着かせてくれるのに役立つ
- 両手の4本の指先や手のひらを使い、息を吐きながら5秒程度かけて「気持ち良い」と感じる程度にゆっくりと押し、押した後は軽く息を吸う
- 上記の手順を数回繰り返す
- リラックスする姿勢
- ベッドの中で仰向けになり、脚を肩幅程度に開き、あごを引く
- 肩の力を抜いて、両腕は体から少し離した位置に置き、だらんと伸ばしておく
- 手のひらを上に向けて胸を開き、背中がベッドに沈み込んでいくようなイメージで、全身の力を抜く
これだけでもリラックスして眠りやすくなる効果が期待できますが、さらに効果を得るための方法として、リラックスした姿勢で行う「筋弛緩法」「腹式呼吸」のいずれか、または両方を組み合わせて行うと良いでしょう。
- 筋弛緩法(脱力によってリラックスする方法)
- 体に力を入れて筋肉を緊張させた後、一気に脱力して筋肉を緩めてリラックスする方法
- 手のリラックス:手をぐっと握って力を入れ、5秒くらいキープし、一気に脱力する
- 足のリラックス:足首をぐっと曲げ、アキレス腱を伸ばす。5秒くらいキープし、一気に脱力する
- どちらも、脱力したときの感覚をじっくり味わうことが重要
- 腹式呼吸(呼吸によってリラックスする方法)
- お腹がへこむのを意識しながら、口から大きくゆっくりと息を吐いていく
- 次に、お腹が膨らむのを感じながら、鼻からゆっくりと息を吸う
- 吸う時の倍くらいの時間をかけ、またゆっくりと息を吐いていく
- 吐くときは、嫌なことや頭に浮かぶことも吐き出して頭を空っぽにするイメージで
良い睡眠のために普段から気をつけておくことは?
ここまで、良い睡眠をとるためには眠る前にしっかりリラックスしておくことが重要だとお話してきました。その他にも普段から意識しておけることとして、眠るためのホルモンを作る栄養バランスの整った食生活を作る、適度な運動習慣を持つ、などが挙げられます。そこで、食生活・生活習慣・その他に分けて、普段から睡眠のために気をつけられることについてご紹介します。
食生活で良い睡眠のために気をつけられることは?
良い睡眠のために、まずは食生活から気をつけていきましょう。最も大切なこととして、就寝時には消化活動が終わっていることが理想的だということが挙げられます。食事をしてすぐに寝てしまうと、体は消化活動を優先してしまいますので、内臓が活動したまま眠りに入ってしまいます。
すると、内臓が休息する時間が短くなるため、睡眠時間は同じでも眠りが浅くなったり、疲れが抜けにくくなったりしてしまいます。帰宅してから眠りにつくまでの時間がどうしても短くなってしまう場合は、消化の良いものを少量食べるだけにしておくと、寝つくまでに消化活動が終わりやすいです。
また、良い睡眠のために必要なホルモン「メラトニン」を作るためには「セロトニン」というホルモンが必要ですが、この「セロトニン」はタンパク質に含まれる「トリプトファン」というアミノ酸から作られます。「トリプトファン」は人間が体内で合成できない「必須アミノ酸」の一種ですから、良質なタンパク質で食事からしっかり摂取しなくてはなりません。
夕食のメニューを肉や魚、卵、乳製品など良質なタンパク質中心にすると、トリプトファンを効率的に摂取できます。ぜひ、良質なタンパク質摂取を意識しながらメニューを考えてみましょう。また、喫煙者の方はニコチンにカフェインと同様の覚醒作用が含まれますので、寝つきが悪くなったり眠りが浅くなったりしてしまいます。就寝前のタバコは避けましょう。
飲み物も良い睡眠に関係する?
温かい飲み物を飲むと内臓から体温を上げられますので、深部体温を上げて、下がるときの自然な眠気を誘うことができます。安眠効果を高めるためには、カフェインの入っていないものを選びましょう。特に、以下の3つがおすすめです。
- 白湯
- 胃腸に負担をかけることなく、体を優しく温められる
- 生姜湯
- 生姜には体を温める効果があり、体の末端まで温めて睡眠の質を高められる
- 市販のものは砂糖が多く配合されているものもあるため、白湯と生姜パウダーで自作するのがおすすめ
- カモミールティー
- ヨーロッパで古くから不眠症対策に使われていたとされ、心身をリラックスさせてくれる香りが特徴
- 湯気が鼻詰まり改善の効果をもたらし、睡眠時に口呼吸になるのを防ぐ効果も期待できる
- 交感神経から副交感神経への切り替えにも効果的とされる
寝つきやすくなる飲み物として、一時的に眠りに入りやすくなるアルコールを「寝酒」として挙げる人もいますが、入眠には良くても、アルコールを分解するために眠りながら内臓が働き続けることになりますので、実際には睡眠が浅くなってしまいます。さらに、利尿作用でトイレに行く回数が増え、熟睡の妨げになる場合もあります。寝る前のアルコールは避けておきましょう。
また、コーヒーや紅茶、緑茶、栄養ドリンクなどにはカフェインが含まれ、覚醒作用によって体を活動的にしてしまいます。これもやはり入眠や深い睡眠の妨げとなりますので、就寝の3〜4時間(カフェインに敏感な人は5〜6時間)前にカフェイン入りの飲み物を飲むのは避けておきましょう。
生活習慣で良い睡眠のために気をつけられることは?
良い睡眠のために生活習慣で気をつけられることとして、まず適度な運動が挙げられます。日中に適度な運動を行うと、生活のリズムにメリハリが出て、自然な眠気から睡眠を得やすくなります。中途覚醒も少なく熟睡しやすいでしょう。もし、動きすぎて興奮状態で眠れないなら、オーバーワークの可能性があります。自分の生活リズムに合わせ、運動の強度も変えてみましょう。
また、休日の前には思いっきり夜ふかしし、朝寝坊や二度寝・三度寝を繰り返す人もいますが、夜に眠れなくなるようなサイクルを繰り返していると、どんどん夜型化していってしまいます。平日に睡眠不足のまま朝早く起きることを繰り返していると疲れが抜けにくくなり、起きたときに眠気も抜けにくくなってしまうでしょう。
入浴時のお湯をぬるめにし、熱くしないことも重要です。熱めのお湯に長く入っていると、体は覚醒してしまいますので、眠るために必要な深部体温の低下を得にくくなります。しかも、高温の湯船に入ることは体の不安も増やしてしまいます。38度くらいのぬるめのお湯に5〜30分つかり、体をじっくり温めて緊張をほぐしましょう。
その他、良い睡眠のために気をつけられることはある?
その他、睡眠のためには環境を整える方法があります。まず大切なのは、自分に合った寝具を選ぶことです。就寝中の発汗や温度変化に対応できるよう、吸湿性や放湿性の良いもの、そして体型に合ったものを選びましょう。体のS字カーブ(後頭部から首や胸、胸から腰)をバランス良く支えられることがポイントです。
- 枕の高さ
- 起きたときに首や肩が凝っていたり、胸の筋肉が張っていたりと緊張が取れていない場合、枕と頚椎のカーブが合っていない可能性がある
- 好みの高さだと思っていても、体に合っていないことはあるので、専門店で計測してもらうと良い
- 敷布団(ベッドマット)の硬さ
- 体に対して柔らかすぎると腰痛の原因になり、硬すぎると骨が当たって痛みを感じたり、血流が悪くなってかえって寝つきが悪くなったりする
- 実際に店頭で寝て試したり、短期間のレンタルサービスを使ったりして、適度な硬さのあるものを選ぶ
また、良質な睡眠のためには照明や室温、湿度なども重要です。季節に応じ、室内の温度や湿度を調節しましょう。室温が暑すぎたり寒すぎたりすると体温調節がうまくいかず、寝つきが悪くなってしまうこともあります。部屋の明るさは不安感や恐怖心を感じない程度に暗くしておくと、朝の光とのコントラストがしっかりつき、スッキリ起きやすくなります。
他にも、ヒーリングミュージックと呼ばれる副交感神経が優位になるような音楽や、海や川などの水のせせらぎを聞いてリラックスしてから眠りについたり、睡眠中の状態を記録してくれるアプリや活動計などを利用し、睡眠の深さに応じて起きやすいタイミングでアラームをかけたりするのもおすすめです。眠りのリズム作りに使ってみてはいかがでしょうか。
眠れないことは思わぬ危険の原因に…
睡眠不足はなんとなく気分がすっきりしない、疲れが抜けない、ということ以外にもさまざまな弊害があります。人間の体はウイルスなどを退治する免疫系、ホルモンなどで体調を整える内分泌系、運動や体調を整える自律神経系などの相互作用によって恒常性が保たれているのですが、ストレスにさらされ続けているとこれらの機能のバランスが崩れ、体調不良を引き起こしやすくなります。
中でも、最も影響が出やすいのは脳機能です。睡眠不足で頭が回らない、ミスが増えるといった経験は誰にでもあるでしょうが、仕事に集中する、機械を操作したり車を運転したりといった高度な操作は認知機能や記憶力など、脳の高度な機能をいくつも使って処理されています。そのため、脳は体の他の器官と比べてエネルギーも休養も非常に多く必要とします。
ですから、睡眠不足で脳が十分に休息できないと、その働きは途端に鈍ってしまうのです。影響を受けるのはパフォーマンス面だけではなく、ストレスを感じやすくなったり、イライラしやすくなったりと感情や思考の面においてもマイナスの影響が及びます。人の反応を読み取りにくくなり、短絡的に考えてさらにイライラやストレスの悪循環に陥ってしまうこともあります。
このようにイライラしがちになると、体内ホルモンの分泌異常を引き起こし、体調にも以下のような悪影響を及ぼします。
- ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌により、高血圧が引き起こされる
- 新陳代謝が鈍くなり、体重増加や脂質異常症につながる
- 睡眠中に作られる免疫抗体が減り、免疫力の低下から病気にかかりやすくなる
- 十分に疲労を回復できず、生活習慣病や脳卒中の原因になる
さらに、「眠らなくてはいけないのに眠れない」ということそのものがストレスとなり、余計に睡眠障害や不調を引き起こしてしまうこともあります。眠れないということは、単に仕事の集中力が散漫になったりミスが増えたりするというだけでなく、事故や生命を脅かすような疾患を引き起こす危険があるのです。ぜひ、十分にリラックスして質の良い睡眠をとりましょう。
おわりに:質の良い睡眠のためには、リラックスが重要
質の良い睡眠のためには、精神的にも身体的にもリラックスが重要です。安心して眠れるために心配事を減らしておいたり、筋肉の緊張をほぐすためにストレッチをしたりすると、心身ともにリラックスして眠りにつきやすくなるでしょう。
他にも、食生活などの生活習慣や、寝具などの寝る環境を見直すことも睡眠の質を高めるために重要です。睡眠障害で脳機能などの不調を引き起こさないためにも、質の良い睡眠と入眠を心がけましょう。
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