ストレスで身体にさまざまな不調があることはよく知られています。また、頭痛は心身に不調が生じたときのサインとしてもよく知られています。つまり、ストレスで頭痛が起こることもよくあることなのです。
では、ストレスで頭痛が起こるのはなぜなのでしょうか。タイプ別の頭痛の特徴やその注意点、セルフケアなどをご紹介します。頭痛を感じやすい人は、ぜひ一度チェックしてください。
頭痛とストレスはどう関係しているの?
頭痛には、大きく分けて「急性頭痛」と「慢性頭痛」の2種類があります。急性頭痛とは、文字通り急激に起こる頭痛であり、発熱や炎症などによって起こる一時的なものや、脳内血管障害や脳腫瘍などの器質的障害によって引き起こされるものです。これらの場合は、原因となる疾患をそもそも病院に行ってきちんと検査・治療しなくてはなりません。
一般的に「風邪や病気でもないのに頭が痛いなあ」と感じる場合は、「慢性頭痛」である場合が多いです。そして慢性頭痛の大半は機能性の頭痛と呼ばれるもので、緊張型頭痛・片頭痛・両方の混合性頭痛の3種類に分けられます。いわゆる「頭痛持ち」と呼ばれる体質的な要因もありますが、心理的・社会的要因(ストレス)が強く影響することもあります。
緊張型頭痛・片頭痛・混合型頭痛には、それぞれ以下のような特徴があります。
- 緊張型頭痛
- 頭痛の50%を占めるとされ、1年間を通じた有病率が74%というデータもあるほど、誰でも経験する頭痛
- 「頭におわんを被った」と形容される、締めつけられるような持続的な痛み
- 身体的・心理的に引き起こされる頭部筋群の過緊張によるもので、肩こりと合併することが多い
- 身体的要因:直頚椎(頚椎が生理的に湾曲していない)、うつむき姿勢、眼精疲労、VDT障害などが
- 心理的要因:さまざまなストレス、不安、抑うつ状態
- 片頭痛
- 片頭痛の1年間を通じた有病率は欧米で20%、日本で7%程度とされる(人種差、生活習慣の差と考えられる)
- 一側性(頭の片側半分)において、ズキズキと拍動する痛みが特徴
- 光や音に対する過敏性が強く、嘔吐してしまうことも
- 頭痛の前駆症状として、閃輝暗点(キラキラとした暗点が視野の中心から周囲に広がっていく)が有名
- 原因は不明だが、脳血管の収縮〜拡張に伴って起こるとされ、うつ病やパニック障害と合併することも多いためセロトニンの代謝異常という説もある
- 心理的要因として、神経質で緊張しやすい性格、不安や抑うつ傾向、過労、睡眠不足、大きなライフイベントなどとの関連性が指摘されている
- 食事性の誘発因子として、チーズに含まれるチラミン、チョコレート中のフェニルチラミン、ホットドッグ中の硝酸ナトリウムが有名
- 混合型頭痛
- 頭痛が慢性化すると、両者の性質を併せ持つようになることも
- ストレスや過労、睡眠不足などですぐに頭痛が現れやすくなる
このように、ほとんどの頭痛は緊張型頭痛や片頭痛など機能的なもので、原因となる疾患があるわけではないものの、ごく一部ではありますが脳出血や脳腫瘍などの重篤な疾患である可能性もあります。ですから、頭痛の診察ではまず器質的疾患がないかを確認し、その結果をきちんと説明することで心身の両面からアプローチすることが重要です。
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緊張型頭痛と片頭痛のことも知っておこう!
前述の緊張型頭痛と片頭痛について、もう少し詳しく症状や原因を見ていきましょう。
緊張型頭痛ってどんな頭痛?
緊張型頭痛は、日本人の頭痛の中で最も多いとされており、15歳以上の日本人の5人に1人が悩んでいる「お馴染み」の頭痛とも言えます。頭の周りや首の後ろから肩、背中にかけての筋肉が緊張するために起こる頭痛で、痛みは後頭部を中心に頭の両側や首筋にかけて起こります。「頭を締めつけられるような」「大きな荷物が乗せられているような」と表現されます。
痛み以外にも身体がふわふわするようなめまい感を伴うことがあり、男性よりも女性の方が1.5倍程度多く発症しているとされています。ストレスが大きく関わっている頭痛なので、いわゆる働き盛りの年齢に最も多いのですが、全体的に見ると子どもから高齢者まで幅広い年齢層に分布しています。
片頭痛に見られるような「ズキン、ズキン」という拍動性の痛みではなく、頭を動かしても痛みが激しくなることはありません。吐いたりすることも基本的にありませんので、能率は落ちるものの、我慢すればなんとか家事や仕事を続けられます。片頭痛の場合は日常生活に支障をきたすことが多いため、この辺りに大きな違いがあります。
緊張型頭痛はどんな人にも起こりうる頭痛と言えますが、家族内発生率を調べた研究によれば、緊張型頭痛にも遺伝的な要因が関係しているのではないか、と指摘されています。ただし、緊張型頭痛に関わっていると考えられる特定の遺伝子は見つかっていません。
緊張型頭痛の原因はストレスなの?
緊張型頭痛の最も大きな原因は、心身のストレスだとされています。机に向かって長時間パソコン作業をする、デスクワークをするなどうつむいた姿勢を続けていると、首や肩の筋肉、頭の筋肉などが緊張して血流が悪くなります。すると、筋肉が披露して神経を刺激され、痛みが生じるのです。精神的ストレスの場合も、血流悪化が原因と考えられています。
女性の場合は、ショルダーバッグを肩にかけるというような特定の姿勢が頭痛を引き起こすこともあります。さらに近年では、「トリガーポイント」という考え方が提唱されており、特定のポイント(トリガーポイント)を圧迫すると、一般的には痛みを感じない程度の圧迫であっても痛みが誘発されることがわかってきています。
このトリガーポイントによって緊張型頭痛が誘発されることがあり、実際の患者さんを診察してみたところ、頭の周囲の筋肉にトリガーポイントが確認できたそうです。つまり、この部分の筋肉が何らかの理由で刺激されることによっても、緊張型頭痛が引き起こされる場合があるのではないかと考えられるのです。
緊張型頭痛で片頭痛に似た症状が出ることもある?
緊張型頭痛には、「反復性緊張型頭痛」と「慢性緊張型頭痛」があります。反復性緊張型頭痛の場合、痛みも軽く短時間で治ることから、ほとんどの人は医療機関を受診しませんし、それで日常生活に大きな支障が生じることも少ないです。
一方、慢性緊張型頭痛の場合、ほぼ連日頭痛が続いてしまいます。反復性緊張型頭痛が10年以上続いて次第に頻度や強度が増してくるというケースがほとんどで、うつ病などの精神的な疾患を併発していることもあります。
慢性緊張型頭痛では、中等度くらいの痛みを訴える人が多いのですが、中には身体を動かすと頭痛が酷くなる、「ズキン、ズキン」という拍動性の痛みを感じる、光や音に過敏になる、といった片頭痛に似た症状を訴える人もいます。この状態にまで進行すると片頭痛と非常に紛らわしくなりますので、一度専門医の診断を受けて治療をした方が良いでしょう。
片頭痛ってどんな頭痛?
片頭痛は、女性に多い発作性の頭痛です。片頭痛と緊張型頭痛の2つはよく混同されてしまいがちで、名称から「頭の片側が痛ければ片頭痛」と思い込んでしまう人も多いのですが、正確には以下のような症状があるものを片頭痛と呼んでいます。この症状に当てはまらない場合は、頭の片側だけが痛くても緊張型頭痛であるケースが多いようです。
- ズキン、ズキンと脈打つような(拍動性の)痛みである
- 頭痛の続く時間は4〜72時間と、比較的短い
- 頭痛が始まると、寝込んでしまうなどして日常生活に支障をきたす
- 吐き気がする、あるいは実際に吐いてしまう
- 頭痛の発作が起きると光や音が耐えられなくなり、暗い場所にこもってしまう
また、片頭痛では頭痛の発作が起こる前に「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれる前駆症状(前兆)が現れることもあります。全ての片頭痛で起こるわけではありませんが、一般的に「火花が散るような」「ギザギザした歯車のような」光が見えたり、視界の一部がその光によって白く遮られたりする症状を訴えるのが特徴です。
閃輝暗点がおさまった後、こめかみから側頭部のあたりが脈打つように痛み始め、尋常ではない激しい痛みが数時間〜3日程度続き、自然に消えていきます。この間、日常生活もままならなくなるような嘔吐や吐き気を含む症状が現れるのも片頭痛の大きな特徴の一つです。
片頭痛が起こる原因やメカニズムについては諸説ありますが、現在最も有力視されているのは脳の三叉神経が刺激されて起こるという説です。脳底部の主幹動脈から大脳皮質表面の軟膜動脈、および硬膜血管には、三叉神経から伸びた神経線維が張り巡らされているのですが、この三叉神経が刺激されることで痛みが起こるというものです。
何らかの原因でこの三叉神経が刺激を受けると、その刺激によってセロトニンなどの神経伝達物質が血中に分泌され、脳の血管が拡張し、周囲に炎症が起こります。同時に、拡張した血管が周囲に張り巡らされた三叉神経を圧迫するため、動脈が脈打つたびに拍動性の痛みが生じるのです。吐き気や嘔吐が起こるのは、その刺激を受けて脳が興奮状態に陥るためだと考えられています。
このように、何らかの原因で三叉神経が痛みに過敏になっているところへ、もう一つの要因が重なると、それが引き金(トリガー)となって片頭痛が引き起こされると考えられています。トリガーとなるものとしてよく知られているのは「ストレスからの解放」ですが、他にもいくつかの要因が考えられます。
- ストレスからの解放
- 緊張型頭痛ではストレスがかかると頭痛が引き起こされるが、片頭痛ではストレスがかかっている最中のみならず、解放されたときにも発作が起こりやすい
- 責任の重い仕事をやり遂げ、肩の荷が下りたとたんに頭痛が始まるなど
- 週末に片頭痛が起きやすいのも、同じ理由
- 気候など、環境的な要因
- 春先によく起きる人、秋口によく起きる人など。梅雨どきや低気圧のときには一様に悪化しやすい
- 朝、カーテンをぱっと開けたらいきなり頭痛が始まった、というように強い光が誘因になることも
- 大きな音、雑踏、タバコ、排気ガスの匂い、他人の香水の香りなど
- 寝不足や寝すぎ、長時間の昼寝なども要因と指摘されている
- 空腹で血糖値が下がった
- 欧米などでは、チョコレートや赤ワイン、チーズなどの食べ物に血管を拡張する作用があるため片頭痛を誘発するとされる(日本人ではそれほど多くない)
- 飲酒と片頭痛は直接関係しないものの、日本人の中にも赤ワインを飲むと頭痛が始まるという人も
また、片頭痛は遺伝的な体質も大いに関係していると考えられています。片頭痛を持っている人は、たいてい家族にも片頭痛の人がいるため、女性の中でも起きる人と起きない人が比較的はっきりと分かれるのです。
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ストレスによる頭痛は薬物乱用頭痛にも注意!
吐き気や嘔吐など、付随する症状がなく頭痛だけが起こったとき、わざわざ病院に行かなくても市販の頭痛薬(鎮痛薬)を買って飲んで抑えれば良い、と思ってしまう人は多いものです。しかし、頭痛が頻繁に起こる人が毎回鎮痛薬を飲んでいると、鎮痛薬によって頭痛が慢性化してしまう「薬物乱用頭痛」というものを引き起こす可能性があります。
一般的に、1日4時間以上の頭痛が月に15日以上(年間180日以上)出現するものを「慢性連日性頭痛」と言いますが、朝起きてから夜寝るまで頭が痛いという状態が1〜2ヶ月、場合によってはもっと長く続くため、患者さんにとっては非常に強い苦痛となってしまいます。片頭痛や緊張型頭痛が慢性化したケースのほか、鎮痛薬の乱用によってこのような慢性的な頭痛が引き起こされることもあるのです。
薬物乱用頭痛は、アセトアミノフェンや非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)などの鎮痛薬、トリプタン、複合鎮痛薬(鎮痛薬とカフェインの合剤など)、エルゴタミン製剤などの薬を常用することで引き起こされます。頭痛が起こりやすい人は、いつ頭痛の発作が起こるかわからないため、痛いときだけでなく予防的に薬を飲んでしまいがちです。
例えば「今日は大切な会議があるから、前もって薬を飲んでおこう」「友達とコンサートに行くのに、途中で頭が痛くなったら困るから薬を飲んでから出かけよう」といった具合に、薬を依存的に飲んでしまうのです。するとどんどん薬の量が増え、それに従って効き目が持続する時間も短くなり、やがては薬そのものによって頭痛が誘発されてしまうこともあります。
「毎日朝昼晩、市販の鎮痛薬を買って飲んでいるけれど全く痛みがとれない、もしかしたら脳腫瘍かもしれない」と不安になって頭痛外来を受診する人もいるのですが、たいていの場合は薬物乱用頭痛であり、頭痛に対して根本的な治療を行ってこなかったために薬物で頭痛が抑えられなくなったり、薬物によって頭痛が誘発されたりしていると考えられます。
薬物乱用頭痛の診断基準は「1ヶ月に15日以上(無水カフェインを含む場合は10日以上)鎮痛薬を飲んでいる」とされていますので、当てはまる人は要注意です。特に、無水カフェインを含む鎮痛薬は依存を招きやすいとされていますので、飲みすぎないようくれぐれも注意しながら使いましょう。
ストレスで起こる頭痛のセルフケアは?
ストレスで起こる頭痛に対してセルフケアを行う場合、そもそも頭痛を起こさないよう日常生活の上で注意・予防を行う方法と、起こってしまった頭痛に対して痛みを軽減する方法の2種類があります。それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。
そもそも頭痛を起こさないように気をつけることは?
まず、どのタイプの頭痛にも共通して言えることとして「生活習慣の見直し」が挙げられます。暴飲暴食をしないこと、刺激物は控えて消化の良いものを食べること、規則正しい生活リズムを保つこと、過労や睡眠不足を避けることなど、健康的な生活習慣と呼ばれるものを実践していけば間違いないでしょう。
その上で、以下のような対策を心がけるとより効果的だと考えられます。
- 首や肩の体操を行う
- 腕や肩を回し、ストレスや疲れで固くなりがちな首周りの筋肉をほぐす
- 毎日数分間、腕や肩を回す運動を行い、首の後ろの筋肉をほぐす(片頭痛予防)
- 運動不足やストレスなどで凝り固まった筋肉をほぐす(緊張型頭痛予防)
- 片頭痛の発生時や、激しい頭痛のとき、発熱を伴う頭痛のときは避ける
- ストレスを溜めない
- 片頭痛がある人の約75%に、頭痛を引き起こすトリガーがあるとされる
- ストレスがトリガーとなる人は多く、約60%はストレスがあるとき、約20%はストレスから解放されたときに起こるという調査結果も
- 緊張型頭痛もストレスや疲労で引き起こされることがある
- 1日の終わりには、入浴やアロマテラピーなどでリラックスする時間を作る
- その他、自分に合ったストレス解消法を見つけて適宜ストレスを解消する
- 片頭痛を予防する食べ物
- マグネシウムやビタミンB2には、片頭痛を予防する効果があるとされる
- 大豆・豆腐・ひじき・ワカメなどの海藻類のほか、サプリメントなどでの摂取もおすすめ
- 避けた方が良い食べ物もある
- アルコール、赤ワイン、チョコレート、チーズ、ピーナッツ、豚肉、人工甘味料など
- ただし、人によって片頭痛を引き起こす食べ物やきっかけ、強さは異なる
- アルコール以外の食べ物で片頭痛が起こることは少ないとされるため、食べたら必ず頭痛が起こる、というほどでなければ神経質にならなくても良い
- 群発頭痛の発作が起こっている期間は、飲酒や喫煙を避ける
また、頭痛を記録しておくと、次に頭痛が起こったときの対処や、頭痛が起こりそうなときの予測が立てやすいです。頭痛の症状は個人差が大きく、トリガーとなるものもさまざまですから、まずは自分の頭痛をじっくり観察し、日記のように「どんなとき、どのような痛みが起き、どのくらいの時間続いたか」といった様子を、例えば以下のように書き留めておきましょう。
- 頭痛が起きた日付、時間帯、痛みが続いた時間
- 頭痛の症状(ズキンズキンと脈打つ痛み、重い痛みなど)
- 頭痛以外の症状(肩や首のこり、吐き気など)
- 頭痛の前に感じた症状(チカチカするなど)
- 薬を服用したかどうか
- 月経があった期間
すると、例えば基本的には片頭痛を持っている人であっても、ときどき緊張型の頭痛が起きていたり、ある生活習慣が頭痛のきっかけになっていたり、ということがわかってきます。専用の頭痛ノートを作っても、普段使っている手帳を使っても構いません。日記アプリなどを利用するのもおすすめです。頭痛が起きたら、忘れずに記録する習慣をつけておきましょう。
頭痛が起こってしまったとき、痛みを和らげるにはどうしたらいい?
生活習慣をしっかり見直しても、やはり体質的に頭痛を引き起こしやすい人はいますので、どうしても頭痛が起こってしまうときはあります。そんなときは、頭痛を軽減する対策をとりましょう。基本的には、緊張型頭痛なら筋肉の緊張をほぐし、片頭痛なら安静にして光や音の刺激を避けておきます。
- 緊張型頭痛の場合
- 筋肉の緊張をほぐすため、入浴や蒸しタオルなどで首や肩周辺を温めたり、ストレッチやマッサージを行ったりする
- 片頭痛の場合
- 痛む部分を冷やし、静かな部屋で横になって休む(※入浴や蒸しタオル、ストレッチなどは血管を広げ、血流をアップするので厳禁)
緊張型頭痛は筋肉が緊張して血流が悪くなることで起こる頭痛ですが、片頭痛は血管が広がることで起こる頭痛です。そのため、入浴やマッサージの効果が正反対に現れてしまいます。緊張型頭痛には入浴やマッサージが効果的ですが、片頭痛に対してはかえって痛みを強めてしまいますので、片頭痛のときには入浴を避け、身体を洗う場合はシャワーなどで軽く済ませましょう。
また、頭痛を和らげるツボを刺激するのも効果的です。東洋医学では「気」と「血」が身体の巡りを担っていると考えられており、その流れのことを「経絡(けいらく)」と呼んでいます。いわゆるツボとは、この経絡の上にある重要なポイントのことで、東洋医学では「経穴(けいけつ)」と呼びます。この経穴を刺激することで、身体の調子を整えられるとされています。
近年では、NIH(米国国立衛生研究所)が鍼灸療法の各種疾患に対する効果とその科学的根拠、西洋医学の代替医療としての効果について、有効であるとの見解を発表したこともあり、ツボを利用した治療法の科学的効果も実証されつつあります。では、最後に緊張型頭痛と片頭痛それぞれに効果的なツボと、ツボの刺激方法をご紹介しましょう。
緊張型頭痛を和らげるツボにはどんなものがある?
緊張型頭痛を和らげるためには、頭や首、肩、顔などのツボを刺激するのが効果的です。
- 頭のツボ
- 百会(ひゃくえ):頭頂部のツボで、両耳と鼻の延長線が交わるところ。身体の中心に向かって垂直に押す
- 首のツボ
- 風池(ふうち):耳の後ろの骨と、後頭部のくぼみの中間
- 天柱(てんちゅう):首の骨の両側にある、太い筋肉の外側のくぼみ
- 完骨(かんこつ):耳の後ろにある骨のふくらみ(乳様突起)の下の後ろ側にあるツボ
- 肩のツボ
- 肩井(けんせい):首と肩先の真ん中にあり、肩の筋肉の中心にあるツボ
- 顔のツボ
- 太陽(たいよう):目と眉、それぞれの端の中間点から指2本分外側にあるくぼみ
- 頷厭(がんえん):髪の生え際に指を当て、口を開け閉めしたときに動きを感じられる部分
- 印堂(いんどう):眉間の真ん中にあるツボ
緊張型頭痛では、後頭部や側頭部に痛みが生じます。そこで、これらのツボを刺激して痛みを緩和するのが良いでしょう。特に、後頭部にある「天柱」は痛みに関係する神経が集まっている部分で、西洋医学でも疼痛の緩和に活用されているツボです。
片頭痛を和らげるツボにはどんなものがある?
片頭痛を和らげるためには、腕や手、足にあるツボを刺激すると良いでしょう。
- 腕のツボ
- 手三里(てさんり):肘を曲げたときにできる横ジワから、手首に向かって指3本分のところにあるツボ
- 手のツボ
- 合谷(ごうこく):人差し指と親指の骨が合流する部分から、少し人差し指側に行った部分のツボ。万能のツボと言われる
- 足のツボ
- 崑崙(こんろん):くるぶしの外側とアキレス腱の間にあるくぼみ
- 足臨泣(あしりんきゅう):小指と薬指の骨が合流するあたり
片頭痛では側頭部・前頭部・頭頂部などに痛みが生じますので、これらの痛みを緩和するツボを刺激しましょう。特に、「足臨泣」などの、足にある「胆経」と呼ばれる胆のうに関するツボが片頭痛の痛みを緩和するのに有効だとされています。
ツボを効果的に刺激する方法って?
ツボを押すときは、手のひらや親指などを使い、気持ちがいいと感じる程度に優しく押しておきましょう。呼吸に合わせて押すとより効果的です。1回につき6秒くらいのリズムで、息を吐きながら少しずつ圧力をかけ、そのまま2秒キープしたら、息を吸いながらゆっくりと圧力を抜いていきます。
手指以外にも、テニスボールやヨガボールを転がしてツボを刺激しても良いでしょう。圧力を加えるだけでなく、ホットパックや蒸しタオルなどでツボを温めるのも効果的です。ツボ押しは一般的に午前中にするのが良いとされていますが、以下の時間帯を避けられれば午後でも構いません。
- 食事の前後1時間
- お酒を飲んだ後
- 入浴の直前、直後
- 押したい部分に痛みや腫れ、熱があるとき
おわりに:ストレス頭痛の多くは緊張型頭痛。人によっては片頭痛のことも
頭痛には急性頭痛と慢性頭痛がありますが、基礎疾患がない場合はほとんどが慢性頭痛のうち、機能性の頭痛です。ストレス頭痛とは、この機能性の頭痛に属するもので、緊張型頭痛と片頭痛の2種類があります。
緊張型頭痛は誰にでも起こりうる頭痛とされており、心身のストレスによる筋肉の緊張が主な原因です。片頭痛は起こる人が限られていて、ストレスがかかったときだけでなく、ストレスからの解放で痛みが生じることがあります。
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