介護職のストレス退職を防ぐための対策とは?

ストレスなく働く介護職の女性ストレス

介護職が体力も精神力も必要とする激務であることはよく知られていて、そのような背景からストレスを抱えやすい仕事であることもやはり有名です。そのため、ストレスによる退職もまた多い傾向にあります。

では、介護職のストレス退職を防ぐためには、どのような対策を行えば良いのでしょうか。介護職が抱えやすいストレスの原因や、企業と本人がそれぞれできるストレス対策をご紹介します。

介護職の人が抱えるストレスの原因は?

介護職の人は、職場の人間関係や人手不足、身体の負担などさまざまなストレスを抱えやすいとされています。ここでは、介護職の人が抱えやすいストレスについて、6つの原因に絞って見ていきましょう。

介護職のストレスの原因①:職場の人間関係

どんな仕事でも職場の人間関係をストレスの原因として挙げる人は多いですが、介護職でもやはり最も大きな原因は人間関係のようです。特に、少人数のチームであることや経歴の幅広さ、関わる人の多さなどがストレスにつながりやすいと考えられます。

少人数のチーム制で、閉鎖的な環境になりやすい
介護の現場は少人数でチームを組むため、閉鎖的な環境になりやすい
少人数なことから、苦手な相手とも密なコミュニケーションが求められる
幅広い年齢層で、経歴も違う人が集まっている
スタッフの年齢層や経歴が異なると、価値観も大きく異なる
価値観が異なると、人間関係がうまく行かない原因に
関わる人が多い
介護職どうしはもちろん、看護職員、ケアマネ、リハビリ専門職など専門職が多い
関わる人が多いうえにそれぞれ専門領域があるので、意見の衝突も多くなりやすい
意見の衝突が度々起こることで、ストレスが溜まりやすくなる

これらの衝突や摩擦が繰り返された結果、人間関係がさらに悪化し、やがてはいじめ・無視・ハラスメント・差別・陰口・不公正な評価などにつながってしまうこともありえます。

介護職のストレスの原因②:慢性的な人手不足

介護職という職種自体の抱える根本的な問題として、少子高齢化による慢性的な人手不足が挙げられます。日本は既に高齢者の割合が総人口の21%を超える「超高齢社会」へと突入しており、2008年には人口減少も始まったことから、世界でも類を見ないスピードで今後も高齢化が進んでいくと考えられています。

そんな中、重労働のわりに給与が低い介護職は離職率も高く、入居者はどんどん増えているもののスタッフが足りないという施設も少なくありません。スタッフが足りないためさらに一人の負担が大きくなり、休日や休憩がとりにくい、残業を強いられる、急なシフト変更が多いといった不満やストレスにつながる悪循環に陥ってしまう、というのが介護職の現状です。

介護職のストレスの原因③:身体の負担

スタッフの身体的負担は利用者の介護レベルなどによっても異なりますが、介護職員は入浴介助やベッドの移動などの肉体労働、不規則勤務などが常に求められるため、非常に体力を消耗します。身体を支えたりかがんで作業したりといった関節や筋肉への負担は、腰痛や膝痛を引き起こしてしまうこともあります。こうした身体的な負担が積み重なっていくと、イライラなど精神面でのストレスにもつながってしまうのです。

介護職のストレスの原因④:利用者や、その家族との関係

介護職は職業そのものも人と関わる仕事です。つまり、利用者やその家族とも良好な人間関係を保ちながら業務を行わなくてはなりません。しかし、実際には認知症などの利用者から心無い言葉を浴びせられてしまったり、暴力を振るわれたりすることもよくあります。症状とはわかっていても、これらの言動や徘徊などの困った行動に心身が疲れきってしまうのは避けられません。

介護の場合、一人の利用者と長期にわたる付き合いをすることになりますので、苦手な相手でも長い間向き合う必要があります。さらに、問題のない利用者の家族だけでなく、そうしたさまざまな問題を抱える利用者の家族にも対応しなくてはならず、ストレスを感じたり、溜め込んでしまったりする人も多いのです。

介護職のストレスの原因⑤:職場の理念や運営方針に合わない

どんな仕事でも経営側と現場の意見の食い違いはあるものですが、介護職でもやはり「経営サイドから売り上げを伸ばすことばかり求められ、効率重視で利用者に寄り添うケアができない」「介護者に負担が多い、無理のある企画が多い」「スタッフが困っていても、管理職は助けてくれない」といった不満を持つ人は少なくありません。

さらに、そうした不満が生じたとき、施設によっては職員からの意見に耳を貸さず「これがうちのやり方なので」と、一方的に考えを押しつけられてしまうこともあります。効率を重視するあまり適切な教育も行われず、ときには違法行為を強要される、といったケースもあるようです。

違法行為にまで至ることは稀でしょうが、理念や運営方針と自分の理想とする介護が食い違ったとき、意見を全く聞いてもらえないことは大きなストレスになりますし、モチベーションが下がる原因にもなります。

介護職のストレスの原因⑥:仕事の評価が難しく、公平感を感じにくい

介護の仕事では、自分のケアが利用者に対してどれだけ価値をもたらしたのかという客観的な評価が難しく、一生懸命働いても多少手を抜いたとしても、報酬が変化するわけではありません。そのため、自分の仕事を適正に評価されていないと感じたり、他の人と比較して不公平に感じてしまったり、管理者が自分の仕事をきちんと見てくれていない、と不信感を感じたりしてストレスが募ってしまうこともあります。

介護職の燃え尽き症候群は増えている?

上記のようにストレスを溜めやすい介護職の人がかかりやすい心の病気として、「燃え尽き症候群(バーンアウト)」があります。燃え尽き症候群とは、意欲的に仕事に取り組んでいた人がある日突然それまでの意欲を失ってしまい、虚無感に襲われて仕事が手につかなくなってしまう一連の症状のことを指します。介護職のほか、看護師や教師なども発症しやすいとされています。

燃え尽き症候群では、以下のような身体的・精神的症状が現れます。

肉体的症状
吐き気、不眠、食欲不振、高血圧、息切れ、胃腸障害など
精神的症状
仕事に対する意欲減少、他人に対する無関心、怒りっぽくなる、自己肯定感の低下など

燃え尽き症候群は介護職における典型的な精神症状の一つですが、発症するとそのまま休職・退職してしまう人も多く、厄介な問題でもあります。燃え尽き症候群の他にも「朝起きると絶望感に襲われ、前向きな考え方ができなくなる」「何事にも無気力になる」「食欲がなくなる」といった症状が強く現れる「うつ病(介護職うつ)」も、やはり介護職の人が発症しやすい精神症状・精神疾患の一つです。

「介護職うつ」と「燃え尽き症候群」には、以下のような症状の違いがあります。

介護職うつの場合
罪悪感が強く、自分を責めがちになる
気分の落ち込みが一貫して続く
燃え尽き症候群の場合
他者に対して怒りの感情を持つ、喪失感が強い
自分をもっと評価してくれる人に対し、憧れの気持ちを抱く

さらに、介護職うつを含むうつ病の場合、再発率が高い精神疾患であり、発症を繰り返すごとに再発率も上がっていくことがわかっています。職場内で介護職うつや燃え尽き症候群を発症して休職・退職する従業員が現れた場合、残された他の職員の負担が重くなり、疾患や症状の連鎖が起こるケースもあります。

また、燃え尽き症候群のなりやすさには男女差があることもわかっています。大阪府内の特別養護老人ホームを対象に行われた調査によれば、介護職員の燃え尽き症候群は女性の方が男性よりも発症例が多く、統計的な有意差もあるというデータが出ています。

同調査によれば、男性は職場内で相談できる相手を重視するのに対し、女性は職場内外それぞれに相談できる相手が必要という傾向も見られ、女性は男性と比べてよりきめ細かいサポートが必要だということもわかりました。他にも同調査から「上司や同僚との人間関係が悪い」「介護サービス利用者との関係が良くない」「仕事にやりがいを感じられない」などの場合に燃え尽き症候群になりやすいということもわかっています。

燃え尽き症候群やうつ病に限らず、精神疾患や精神症状は早めに気づいて対処することが早期回復につながります。おかしいな、と思う症状や状態に気づいたら、我慢せず早めに信頼できる人や医療機関に相談しましょう。

介護職の働き手をストレスから守るために企業側ができることは?

では、逆に介護職の働き手にとってどんな環境であればストレスを感じにくく、長く働き続けられるのでしょうか。公益財団法人介護労働安定センターの「平成28年度介護労働実態調査」によれば、具体的に以下のような職場環境が求められると結論づけられています。

  • 職員一人ひとりの性格、特徴に配慮したメンタルケアを行う
  • 対人関係構築のための訓練を、職場として行う
  • 職員に対し、満足のいく収入を保障する
  • やりがいを感じられるような職場をつくる

このような職場を作るためには、施設の理事長や現場のマネジメントを行う施設長など管理職の立場が、日頃から介護職員の意見やニーズを汲み取り、職場環境・労働条件・福利厚生システムの中に活かしていく必要があります。厚生労働統計協会の「介護業務における『バーンアウト』改善に向けた調査研究」でも、介護職員が長く働き続けるためには「同僚との人間関係」「給与待遇」「仕事とのやりがい感」などが重要視されていることがわかっています。

さらに、時代の変化とともに介護職員の仕事に対する意識も変化していくことを理解しておかなくてはなりません。世代の異なる職員は、当然その価値観も異なります。それぞれの世代がどのような意識を持って働いているのか、管理職や経営側は情報収集を忘れないようにしましょう。それこそが、貴重な介護職員を燃え尽き症候群やうつ病による休職・退職で失わないために重要なことなのです。

また、以下のような職場は論外です。当てはまる部分があれば、即刻改善していきましょう。

  • 労働基準法を守っていない
  • 無理な残業や休日出勤、夜勤などを強いられる
  • 日常的にいじめやハラスメントが見てみぬふりされ、改善策がとられていない
  • 違法な医療行為を強いられる

自分自身でできる対策は?

ここまで見てきたように、介護職がストレスの多い職場であることは事実です。しかし一方で、介護職でありながら精神疾患や精神症状を発症しない人も一定数います。つまり、ストレス度が高ければ必ず精神疾患や精神症状を発症する、というわけではありません。強いストレスを受けてストレス度が高まっても、それを肯定的に受け止めて対処できれば、心の病気にはなりにくいと考えられます。

そもそも、ストレスには「良いストレス」と「悪いストレス」があり、例えばやや高めの目標を設定してそれに向かって努力するとき、努力に伴うストレスは「良いストレス」となります。しかし、高すぎる目標を他者から設定されてそれを何が何でも達成しなくてはならない、となってしまうと「悪いストレス」になってしまいます。

介護職で受けるストレスは必ずしも高すぎる目標とは限りませんし、仕事に伴うストレスは自分の見方次第で努力と捉えられる場合も少なくありません。そこで、ストレスをより肯定的に捉えるために、自分でも以下のような対処を行うと良いでしょう。

生活習慣を整える
生活習慣が乱れると、心身ともに弱まってしまう
規則正しい睡眠と食事をとり、意識的に生活習慣を整える
夜勤などで難しい場合は、運動やストレッチなどをするだけでも効果的
ストレスの原因を考える
ストレスの多い仕事だからこそ、ストレスときちんと向き合う
ストレスの原因を明確にし、対処法を講じる
原因不明なストレスはそれだけで心身の負担になるため、原因が明らかになるだけでも心が落ち着く
人に悩みを話す
心にモヤモヤとする気持ちがあるなら、人に話を聞いてもらうのも良い
職場の同僚に相談するのが難しければ、家族や友人に愚痴をこぼすのもOK
溜まったストレスは爆発してしまうので、一人で溜め込まないことが重要
価値観の違いを受け入れる
同じ職場で働く人でも、価値観は人それぞれ
ストレスを感じすぎないよう、人は人、自分は自分と受け入れて割り切ることも重要
価値観の違いは、自分と違う介護スタイルを知るいい機会でもある
将来を考える
介護職として将来的にどうありたいか、よく考える
不満に感じていることがあれば、それを将来に役立てられるかも
数年後にキャリアアップするためのメリットと不満を照らし合わせる
職場環境を見直す
上記の対策を行ってもどうしてもダメなときは、思いきって職場環境の見直しをするのも手
誰かに相談したり、転職したりと方法はさまざま
我慢せず、限界を感じる前に現状を打開するための行動を起こすことを忘れずに

自分のストレス度合いを知るためには、厚生労働省が提供している「5分でできる職場のストレスセルフチェック」を実施するのがおすすめです。定期的にセルフチェックを行い、ストレス度合いが高いときには積極的に解消するよう工夫したり、我慢せず身近な人を頼ったりするようにしましょう。

おわりに:介護職のストレス退職を防ぐために、企業も本人もできることから対処を

介護職は閉鎖的な人間関係や人手不足、業務内容による心身の負担など、何かとストレスを抱えやすい仕事であることは間違いありません。燃え尽き症候群や介護うつに進行してしまうと、そのまま休職や退職に追い込まれてしまうこともあります。

そこで、企業側も人間関係や給与・待遇、やりがい感など環境面での対処を行うとともに、職員側も自ら対処やセルフチェックを行えると理想的です。ぜひ、できることから対処を行いましょう。

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