会社勤めをする人の多くがデスクワークを行いますが、デスクワークは長時間同じ姿勢でパソコンの画面を見つめるため、疲れも溜まりやすい傾向にあります。デスクワークの疲れを回復するには、どんな方法があるのでしょうか。
今回は、デスクワークをする人に絞って疲れの原因やおすすめの疲労回復法などをご紹介します。ぜひ、チェックして日々の仕事や息抜きに取り入れてみてください。
デスクワークで疲労がたまってしまう原因は?
そもそも、疲労はどうして溜まってしまうのでしょうか。もし疲労が溜まらなければ、私たちはいつまでも身体を酷使し続け、やがて死に至るでしょう。つまり、疲労は身体に休息が必要だということを脳に知らせるための、いわばアラームのような仕組みだと言えます。このアラームは肉体・精神が活動するときに必要なエネルギーを産出する過程で生まれる「活性酸素」の増加によって発動します。
活性酸素が増加すると、その酸化作用で細胞が傷つけられて老廃物が発生し、脳が「疲れた」というアラームを受け取ります。運動したり緊張したりすると、終わってからどっと疲れを感じるのはこうしたシステムによるものです。これは動物の本能とも言えるシステムで、疲れのアラームを感じるからこそ、いったん活動を止めて休むことができるわけです。
しかし、人間はときに疲労のアラームを無視して活動を続けてしまうことがあります。興奮していたり、幸福感・達成感に満たされたりしていると、疲れを感じずに活動し続けてしまうのです。すると、十分に疲労回復できないまま活動が続くので、どんどん疲労が蓄積されていってしまいます。これは身体にとって非常に良くない状態なのです。
では、疲労が溜まる原因になるのはどんなことなのでしょうか。疲れを以下の4種類に分け、それぞれの特徴と原因について見ていきましょう。
末梢疲労
- 脳ではなく、末梢の部分の身体を動かした後の疲れ
- 運動したり、長時間の立ち仕事をしたりすることで感じる身体のだるさ、筋肉疲労
- ほとんどの場合、十分な睡眠や休息をとれば回復できる
眼精疲労
- 目の疲れと思いがちだが、実は自律神経の疲れとされる
- パソコンやスマホなどを使うとき、脳は緊張・興奮状態になり、交感神経が活発に
- 交感神経が優位になると、獲物を探す動物の本能として目は遠くを見るのに適した状態になる
- しかし、パソコンやスマホの画面は目の前にあるので、近くを見る副交感神経にも指令を出す
- 交感神経が優位ながら、副交感神経にも指令を出すことで自律神経が疲れてしまう
中枢性疲労
- 脳が長時間緊張している状態で、調整能力がうまく働かない
- 疲れてぼんやりしてしまうなど、倦怠感を感じてしまう状態
- ストレスや睡眠・栄養の不足による生理的疲労、病気が原因の病的疲労の2種類
- 生理的疲労の場合は生活習慣の乱れを改善するとある程度の回復が見込めるが、病的疲労の場合は原因疾患を治療しなくてはならない
精神疲労
- 文字通り、心が疲れてしまった状態
- いつものように心が機能せず、何事にも無気力になってしまうなどの症状が出る
- 過度なストレスなどが原因と考えられる
一般的に認識されやすいのは「末梢疲労」であり、激しい運動や長時間の立ち仕事など、身体を酷使する仕事で疲れが溜まるのは誰にでもわかりやすいことです。しかし、上記のように「眼精疲労・中枢性疲労・精神疲労」など、実際には身体を動かさなくても溜まる疲労もたくさんあります。
デスクワークにおいて特に気をつけなくてはならない疲労は「眼精疲労」でしょう。会社勤めをしている人の多くが、パソコンを使ったデスクワークを行っています。画面が明るすぎたり、照明や太陽光がディスプレイに反射して見づらかったりすると、目や自律神経にかかる負担はさらに大きくなります。
また、デスクワークでは長時間同じ姿勢を保つため、肉体的な「末梢疲労」も起こりやすいと考えられます。座ったときに猫背にならず、背骨が本来のS字カーブを描くような正しい姿勢で作業を行えば、疲れにくくなるでしょう。そのためには、深く腰掛けられて作業中に肘の角度が90度になるよう、椅子やデスクの高さを調整することが必要です。また、従業員が正しい姿勢を保てるような背もたれつきの椅子を購入するのも良いでしょう。
脚を組む行為は姿勢を歪め、血行を滞らせてより疲労を溜めてしまいます。椅子は足の裏が床にしっかりつくような高さにしましょう。足が床につくと、下半身が安定して背筋を伸ばしやすくなりますので、上半身も正しい姿勢を保ちやすくなります。
息抜きには仕事においてもメリットがある?
上記のように、デスクワークでも疲れは溜まってしまうことがわかりました。溜まった疲労を解消するためには、適度な息抜きが重要です。息抜きによって肉体的・精神的な疲労を解消することは、仕事においても効率やモチベーションのアップにつながります。
- 息抜きで業務効率アップ
- 疲れを感じながら仕事をしていると、なかなか思うように作業が進まないことも多い
- 業務の合間に適度なリフレッシュを行うことで、仕事のパフォーマンスアップに
- 国内で行われたある研究によれば、仕事中にリフレッシュした場合としなかった場合では、前者の方が業務効率がアップしたという報告も
- 休憩時間の長さが同じなら、早い段階でリフレッシュした方が効果が大きいともされる
- リフレッシュしてモチベーションアップ
- 疲れたまま仕事を続けたり、同じ作業を繰り返したりしていると、どうしてもモチベーションが下がってくる
- 甘いものを食べる、軽く運動するなど短時間のリフレッシュを取り入れれば、仕事から離れて頭を切り替え、また頑張ろうというモチベーションにつながる
このように、リフレッシュは疲労を回復して作業への集中力を高め、業務効率をアップするだけでなく、仕事や業務内容についてプラスの感情を持ち続け、モチベーションを維持するためにも大きな役割を果たします。ぜひ、疲れてきたなと感じたら早めに積極的なリフレッシュの時間を取りましょう。
仕事中にできる疲労予防対策は?
仕事中に疲労が溜まらないようにするためには、仕事を始める前にできることと、疲れが溜まりすぎる前にできることの2つがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
疲労予防対策①:仕事の前にチェックすべきこと
仕事の前にできる疲労対策には、以下の2つがあります。
- パソコンの明るさと位置を調整する
- 照明など周囲の明るさと、ディスプレイの明るさの調和がとれているかしっかり調整する
- 目がチカチカする場合はブルーライトカットメガネをかける、照明や太陽光が反射してしまう場合はアンチグレア(反射防止)フィルムを貼るなども効果的
- ディスプレイの上端がちょうど目の高さに、顔から50cm以上離れた位置にあるのが理想的
- 正しい姿勢を意識する
- 深く腰かけられ、作業中に肘の角度が90度になるよう机と椅子を調整する
- 肩や腕の負担を減らすには肘かけつきの椅子、長時間のデスクワークには背もたれつきの椅子がおすすめ
- 足を床につけ、下半身を安定させて背筋を伸ばし、正しい姿勢を意識する
仕事前には、パソコンの位置や椅子・机の高さなどを正しい姿勢かつ目の疲れにくい場所に調整しましょう。また、ブルーライトカットメガネや反射防止フィルムなど、目の疲れを防ぐアイテムも必要に応じて使いましょう。
疲労予防対策②:疲れてきたな、と感じたら
疲れてきたな、と感じたら気分転換をしましょう。デスクワークでは特に長時間同じ姿勢をすることで筋肉が凝り固まり、血行が悪くなって肉体的な疲れにつながることが多いので、筋肉を伸ばして血行を促進し、身体の疲れを取り除く「ストレッチ」が有効です。血行が良くなれば身体中に新鮮な酸素や栄養が行き渡りますので、気分もスッキリするでしょう。
以下の3つのストレッチは、いずれも椅子の上に座ったままできますので、ぜひ取り入れてみてください。
- 肩・首を伸ばす
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- 上半身をまっすぐ伸ばし、首を右に傾けてしばらくキープする
- ゆっくり戻し、次は左側に傾けてしっかり伸ばす
- 正面を向き、顎を胸につけるように首をゆっくり前に倒してしばらくキープする。気持ちいい程度に伸びたら、ゆっくりと戻す
- 背筋を伸ばして上半身をまっすぐに戻し、両手を上げて後頭部で指を組む
- 頭を押し出すように首を倒し、しばらくキープ。気持ちいい程度に伸びたら、ゆっくりと戻す
- 肩をリラックスさせる
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- 上半身をまっすぐに立て、両肩を上に引き上げてすぼめ、腕を自然に垂らす
- ゆっくり息を吐きながら力を入れ続け、5秒間キープする。5秒経ったら肩の力を抜き、ストンと元に戻す
- 背筋を伸ばす
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- お尻を前に移動し、椅子に浅めに腰かける
- 身体の前で両手を握り、手のひらを外側に向ける
- 背もたれにもたれかかりながら、弧を描くように腕を上げ、背中全体を反らして伸ばし、しばらくキープする
- 気持ちいい程度に伸びたら、ゆっくり戻す
身体がこわばってきたな、疲れてきたなと感じたら、ぜひ上記のストレッチを行いましょう。目安として、1時間デスクワークに集中したら数分間のストレッチタイムを設ける、というようにすると疲労を蓄積させにくいです。
また、定期的に立ち上がって姿勢を変えるのも有効な方法です。こまめに立ち上がり、歩いて下半身の筋肉を動かし、溜まった血流を流して心臓に戻しましょう。例えば、短時間のトイレ休憩を挟んだり、ファイルを取りに行ったり、コピー作業のような立ち仕事を挟んだりと、姿勢が変わるように仕事をローテーションするのがおすすめです。
疲労予防対策③:昼休みに仮眠をとる
デスクワークの疲れを癒すためには、昼休みに短時間の仮眠を取り入れるのも効果的です。デスクにうつ伏せて身体を休めるだけでも疲れが軽減されるので、ぜひ試してみましょう。ただし、仮眠をとるときは10〜15分程度の短時間とするのがポイントです。それ以上の長時間眠ってしまうと眠気が取れにくくなり、起きたときにかえって疲労感が増してしまいますので気をつけましょう。
食後は満腹感もあり、ついつい昼休みの残り時間めいっぱい眠ってしまいがちなのですが、短時間だけ眠ることを忘れないようにしましょう。どうしても眠気が長引いて起きられない、という人は仮眠の前にコーヒーなどカフェインを含んだ飲み物を飲んでおくと、ちょうど起きるころにカフェインの眠気覚まし効果が働いてくるのでおすすめです。
仕事の疲労回復におすすめのおやつは?
仕事の疲労回復には、おやつを食べるのも効果的です。チョコレートなどの甘いおやつが肉体的な疲労回復に効果的なことはよく知られていますが、デスクワーカーの場合もやはり脳が大量のブドウ糖を消費するため、おやつを食べることは脳の疲労を回復するのにも役立つのです。
安静時における身体全体のカロリー消費量のうち、約20%を脳が占めているとされています。つまり、疲れたらおやつで脳が活動を続けるための糖分やカロリーを摂取すれば、集中力が回復したり低下した業務効率を再び高めたりする効果が期待できます。
ただし、おやつはカロリーを摂取しすぎて肥満につながらないよう、また、1日に摂取する栄養バランスを考えて選びましょう。例えば、日々の食事で不足しがちな食物繊維・ミネラル・ビタミンなどを補うためにはドライフルーツやナッツ類、こんにゃくゼリーなどがおすすめです。一方、良質なタンパク質を摂取したいときには、ヨーグルトなどが良いでしょう。
また、シーン別に以下のようなおやつがおすすめです。自分に合ったおやつや、好みのおやつで上手に栄養素やカロリーを補給しましょう。
ダイエット中の人におすすめ
- シリアルバー
- 食物繊維を豊富に含むので、ボリュームがあり長時間満腹感が続く
- チョコレート
- カカオ分を多く含み、砂糖を使わないハイカカオのチョコレートならダイエット中にもおすすめ
- ヨーグルト
- 良質なタンパク質、カルシウムが摂取できる。低糖や無糖がおすすめ
- ゆでたまご
- 小腹を満たしながら、良質なタンパク質を摂取できる
集中力を高めたいときにおすすめ
- ラムネ
- ブドウ糖を原材料とするため、脳の疲れに即効性がある。ただし、食べすぎはインスリンの作用で急激に血糖値が低下して眠気を誘ってしまうので、食べすぎに注意
- ナッツ
- 血糖値が急上昇しないため、眠くならず効率的にカロリー補給できる
- ガム
- 顎を動かしてガムを噛むことで、脳が活性化し集中力が高まる
- グミ
- 噛みごたえのあるハードタイプや、ジンジャー味など刺激のあるものがおすすめ
美容・健康を意識する人におすすめ
- ドライフルーツ
- さまざまな栄養素が凝縮されていて、食物繊維やビタミンを効率的に摂取できる。砂糖や油脂などが添加されていないものを
- ナッツ
- 食物繊維、ミネラルなどを豊富に含む
- こんにゃくゼリー
- 低カロリーで食物繊維を大量に摂取できる
- 小魚
- 各種ミネラルなどを豊富に含む
おやつは職場のコミュニケーションツールとしても使えます。ぜひ、チームのメンバーや職場内のスタッフとシェアするなど、息抜きのおやつタイムを楽しんでください。
おわりに:デスクワークの疲れは、ストレッチやおやつなどの適度な息抜きで解消!
デスクワークの疲れは、主にパソコンの画面を見続ける「眼精疲労」と、長時間同じ姿勢を続ける「末梢疲労」が原因と考えられます。そこで、まずは眼精疲労や悪い姿勢を防ぐためにパソコンや机、椅子の調整を行いましょう。
長時間同じ姿勢でいるときは、1時間に数分間ストレッチの時間を設けたり、昼休みに仮眠をとったりするのがおすすめです。脳が疲れたらおやつを食べ、適度にカロリーを補給するのも忘れないようにしましょう。
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