突然足元がふらつくめまいは、耳鳴りなど他の症状を伴うこともあって不快なものです。めまいが起こる原因にはさまざまなものがありますが、ストレスからめまいが起こることもあることをご存知でしょうか。
今回は、ストレスが原因で起こるめまいとその対処法を中心に、めまいが起こる原因や危険なめまいの特徴などをご紹介します。めまいに悩まされている方は、ぜひ一度確認してください。
めまいが起きる原因は?ストレスはどう関係しているの?
めまいとは、自分や周囲が実際には動いていないにも関わらず、動いているように感じる状態の総称です。人の身体は耳・目・関節・筋肉で感じ取った周囲の情報を小脳が調整してバランスをとっています。そのため、関連する器官に一つでも問題が起こると、バランスが乱れてめまいが起こってしまうのです。
めまいは、症状によって3つのタイプに分けられます。
- 回転性めまい:自分や周囲がぐるぐると回っているように感じる
- 浮動性めまい:身体がふわふわ、フラフラするように感じる
- 立ちくらみ:急に立ち上がったときにクラッとする
このうち、最も症状を訴える人が多いのは「回転性めまい」です。主な原因は耳の異常で、代表的なものに内耳の異常から引き起こされる「良性発作性頭位めまい症」があります。上や下を向いたり、寝返りを打ったりして頭をある特定の方向に動かすと、数秒〜数十秒にわたって激しい回転性のめまいが襲うものですが、それ以外に異常が隠れているわけではなく、心配しすぎなくても良いでしょう。
内耳には身体のバランス感覚を司る「耳石器」と「三半規管」があります。耳石器には炭酸カルシウムの細かい結晶である「耳石」がたくさん付着しているのですが、この耳石が剥がれて三半規管内に移動し、内リンパ液の流れを乱すことでめまいが生じます。その特徴から、骨密度が低くなって耳石が剥がれやすくなる更年期以降の女性に多く見られるとされています。
良性発作性頭位めまい症はたいてい1ヶ月程度で自然に治りますが、その分再発もしやすい症状です。耳石が1ヶ所に留まり続けないよう、普段から頭をよく動かすような生活を送っていると予防になることがわかっています。心当たりのある方は、日常生活の中でぜひ頭や身体をよく動かすような家事や運動習慣を持ちましょう。
一方、同じ回転性のめまいであっても、激しいめまいが長期にわたって繰り返し起こる場合は「メニエール病」が疑われます。メニエール病の場合、1回あたりのめまいは10分〜半日にもおよび、頻度は週に数回〜年に数回と個人差が大きいのが特徴です。さらに、難聴や耳鳴り、吐き気や嘔吐などを伴うこともあり、日常生活に支障をきたしかねません。
メニエール病は、内耳で内リンパ液が増えて水ぶくれのような状態になり、「三半規管」や「蝸牛」を圧迫することで症状が現れます。水ぶくれが起こる原因はまだよくわかっていませんが、体内の水分量を調節するホルモンがストレスで変調するためではないか、とされています。つまり、ストレスを減らすことがメニエール病の根本的な解決方法だと考えられます。
三半規管はストレスに弱いことでよく知られており、何か心配ごとがあったり、疲れが溜まっていたり、寝不足だったりすると過敏に反応してしまうことがあるのです。実際に、メニエール病を発症しやすいのは精神的・肉体的疲労を抱える人、ストレスの多い人、睡眠障害を持つ人などだとされています。
浮動性めまいも、過労や睡眠不足などストレスによる心身の不調時に起きやすいとされていますし、立ちくらみの原因は自律神経が乱れ、脳が一時的に血流不足になることだとされています。自律神経が乱れるのもやはり心身のストレスが大きな要因と考えられますので、ストレスはさまざまなめまいを引き起こすと考えて良いでしょう。
ストレスによって自律神経が乱れると、消化器系の機能が低下したり、内耳の器官そのものが血流不足になったりします。立ちくらみは起立性低血圧の一種ですが、低血圧の方や思春期の子ども、成人でも若い方によく見られる傾向があります。これは、ストレス以外にも自律神経が未成熟であることによる調節障害、血圧低下や貧血などが要因として挙げられるためです。
また、女性の場合は月単位でも生涯の中でも多くのホルモンバランスの変化を経験するため、めまいを起こしやすい傾向にあります。前述の「良性発作性頭位めまい症」は50〜60歳代の女性に多く見られる症状であり、更年期に伴う女性ホルモンのバランスの変化や、カルシウムの代謝異常(骨密度の低下にも関わる)などが関係していると考えられています。
他にも、以下のような要因が女性のめまいを引き起こすとされています。
- 月経
- 月経の出血によってヘモグロビンが減少し、貧血を起こしやすい状態になる
- 月経時、プロスタグランジンが過剰分泌され、胃腸の収縮が活性化して吐き気を伴うことも
- 体内の血液量不足が原因で起こる「虚血性貧血」により、吐き気を伴うめまいが生じることも
- 片頭痛
- 片頭痛に伴って、回転性のめまいが起こることも
- 自律神経症状
- 月経前症候群(PMS)や更年期障害など、ホルモンバランスの変化によって自律神経機能が乱れてめまいなどの症状が出ることがある
ストレスによるめまいはどう対処すればいいの?
まず、めまいが生じたら深呼吸して安静にし、水分補給を行いましょう。その上で、普段の生活の中で充分な睡眠をとり、適度な運動を行い、ストレスを抱えすぎないよう上手に発散していくことが重要です。また、同時に消化器系の不調が生じる、PMSに伴って起こるなど自律神経症状の一種だと考えられる場合は、以下のような対処法も良いでしょう。
- 自律神経症状が出たら、深呼吸を行う
- 緊張が高まると呼吸が浅くなり、放置していると動悸や過呼吸につながることも
- 呼吸が浅いと感じたら、意識的に「ゆっくり吐いて、ゆっくり吸う」深呼吸を行う
- 睡眠時間を充分に確保する
- 疲労回復のためにも、自律神経の働きを整えるためにも、睡眠を最優先で確保する
- 眠れない日が続き、気分が落ち込むなどの症状も出てくる場合、うつ病などの可能性も
- ストレス負荷のかかりすぎに注意
- 客観的に自分の置かれた状況を見つめ直し、ストレス要因をできる限り取り除く
- 「外せる負荷はないか」と捉え直し、抱え込んでいる問題を手放していく
- 症状が改善しているときには、ヨガなどの運動を
- PMSが現れやすい月経前などは、積極的に身体を動かすと症状が軽減される
- 運動が嫌いな人でもヨガなどの呼吸法を中心としたものは行いやすい
- 背骨、腰、骨盤など、固くなりやすい部位をまんべんなくほぐしていく
自律神経を整えるための簡単なヨガとして、以下の3つがおすすめです。
- タツノオトシゴのポーズ:寝る前にベッドで
- 大の字に寝転がって両膝を立て、片方の脚の膝をもう片方の脚で跨ぎ、引っかける
- 両肩を床から離さないように気をつけながら、引っかけた脚の方に脚の重みで下半身を倒す
- そのまま20秒深呼吸を行い、反対側も同様に行う
- 稲穂のポーズ:オフィスなど、椅子の上で
- 椅子に座ったまま後ろで手を組み、肘は真っ直ぐ伸ばしたまま肩甲骨を引き寄せる
- 上半身を腕ごと、倒れられるところまで倒していく
- その状態で20秒深呼吸し、ゆっくり身体を戻す。頭のリフレッシュに最適
- うさぎのポーズ:自宅の居間など、動きやすい場所で
- 膝を腰幅に開いて四つん這いになり、タオルを置いた床の上に頭のてっぺんをつける
- 首と肩の力を抜き、20秒間深呼吸を行う
- 頭頂部を床につけたまま、円を描くように動かす
いずれも、しっかり深呼吸を行うことが重要です。ポーズと呼吸に意識を集中し、じっくりと身体をほぐしましょう。
危ないめまいの特徴は?
上記のような対策で落ち着くめまいも多いのですが、一方、めまいや吐き気の症状の裏に重篤な疾患が隠れている場合もあります。最初にご紹介したメニエール病をはじめ、以下のような疾患や症状に心当たりがあれば早めに病院で診察を受けましょう。
- メニエール病
- 30〜50歳代に多く、明確な原因は不明だが、内耳のリンパ水腫によって回転性のめまいが生じるとされる
- 精神的ストレスのほか、疲労や睡眠不足が原因になる場合があり、繰り返しめまいの発作を起こす
- 症状:めまい、吐き気、嘔吐、難聴、耳の閉塞感、耳鳴りなど
- 受診:耳鼻咽喉科
- 主に内服治療を行いながら、ストレスなどの原因を解消するとともに散歩などの適度な運動習慣をつくる
- 前庭神経炎(内耳性めまい)
- 突如、激しい回転性めまいが1分以上続き、吐き気や嘔吐を伴う
- 症状は数日間続くケースが多く、改善までに1週間程度かかるため、入院が必要な場合も
- 前庭神経にヘルペスウイルスが感染することが原因で起こると考えられる
- 症状:めまい、吐き気、嘔吐、ふらつき、耳鳴り、難聴など
- 受診:耳鼻咽喉科
- 症状を抑えるため、ステロイド薬の投与が有効と考えられている
- 脳疾患(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)
- 小脳や脳幹に異常が生じると、回転性のめまいが起こる場合がある
- 症状:めまい、頭痛、意識低下、ものが二重に見える、呂律が回らない、運動障害など
- 受診:脳神経外科
- 血栓溶解療法で血管の詰まりを改善したり、血栓が生じないように投薬治療を行ったりする
- 椎骨脳底動脈循環不全症
- 首を伸ばす、回す、身体を動かすなどの動きでめまいが起こることがある
- 回転性のめまいが多く、目の前が暗くなる場合も。脳内を流れる椎骨動脈の血流量が減って起こると考えられている
- 症状:めまい、吐き気、嘔吐、上肢痺れ、視界がぼんやりする、意識が遠くなるなど
- 受診:脳神経外科
- 主に、血圧や血液の粘性をコントロールする薬物療法を行う
- 突発性難聴
- 突然、片側の耳が聞こえにくくなる疾患。発症原因は不明だが、内耳の血流障害、内耳のウイルス感染などが原因と考えられている
- 40〜60歳代に多く見られ、糖尿病、ストレス過多、疲労過多、睡眠不足などで起こりやすい
- 症状:難聴、激しいめまい、耳鳴り、吐き気など
- 受診:耳鼻咽喉科
- 主に、副腎皮質ステロイド薬を使った薬物療法が行われる
このうち、特に緊急を要するのが突発性難聴と脳疾患です。脳疾患はめまいや吐き気だけでなく、意識レベルが低下したり呂律が回らなくなったりと明らかに異常な症状が現れることが多いため、すぐに病院を受診しやすいのですが、突発性難聴の場合は「片耳が聞こえづらい」というだけでは緊急性を感じない人も多いのです。
しかし、突発性難聴も治療開始が遅れると聴力回復が難しくなることがあり、放置していると取り返しがつかなくなってしまう可能性があることに充分注意しましょう。他にも、メニエール病のめまい発作を繰り返しているとだんだん症状が悪化していき、5〜10年程度で高度な難聴を発症してしまう恐れもあります。
上記の疾患に心当たりがなくても、以下のような疑わしい症状があれば放置せず、できるだけ早く耳鼻咽喉科や脳神経外科などの病院で診察を受けましょう。
- 身体に痺れがある
- 麻痺の症状があり、歩けない
- 身体の震えが止まらない
- 意識が朦朧とする
- 体験したことがないほどの激しい頭痛に襲われた
- ものが二重に見えたり、視界の一部が暗くなったり、視野が狭くなったりした
- 嘔吐を繰り返す
おわりに:ストレスは自律神経の乱れや血流低下でめまいを引き起こしやすい
めまいの原因はさまざまですが、特にストレスからホルモンバランスや自律神経の乱れ、身体の血流不全などによってめまいを引き起こすことが多く見られます。ホルモンバランスの乱れやすい女性は特にめまいを起こしやすい傾向があるとされています。
めまいや吐き気の裏には、メニエール病や突発性難聴、脳疾患などが隠れている場合もありますので、該当する症状に心当たりがあれば放置せず、できるだけ早く病院を受診しましょう。
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