同じように仕事をしているように見えても、仕事がどんどん進む人と進まない人がいます。単純な能力差も考えられますが、仕事のやり方や取り組み方などに何らかの問題があって仕事の進み具合に差が出ている場合もあります。
そこで、今回は仕事が進まない原因について、スキル面ではないところから考えてみましょう。病気の可能性もありますので、心当たりがあればぜひチェックしてください。
仕事が進まなくなりやすい人の特徴は?
仕事が進まなくなりやすい人にはさまざまな特徴がありますが、大きく分けて以下の4つの傾向があります。
仕事が進まなくなりやすい人の特徴①:いつも時間がない
いつも時間がない、余裕がない人は一見多くの仕事をこなしているように見えますが、実際は一つの仕事にかかる時間が長すぎて、常にマルチタスク状態になってしまっている人がほとんどです。すると、どれから手をつければ良いのかわからなくなって期日が目前になったり、とにかくやらなくてはいけないと焦ったりしますが、そんな状態ではなかなか成果に結びつきません。
そもそも同じ仕事を与えられていても時間がない、余裕がない状態になってしまうのは、業務の仕組み化・効率化ができていないからだと考えられます。「資料のフォーマットがない」「毎回違う形式の報告書を提出する」といった人は、本来省略できるはずの「フォーマットを作る」「必要な情報を洗い出す」などの時間を毎回無駄に使っているのです。
また、パソコンの作業ができない人ほど資料をひたすら手入力しようとする傾向がありますが、これもWordやExcel、PowerPointなどの機能を覚えて活用することで効率化できるところはたくさんあります。このような効率化の手段を知っておかないと生産性が低くなってしまい、一つの仕事がなかなか終わらなくなってしまうのです。
仕事が進まなくなりやすい人の特徴②:仕事を引き受けすぎる
なんとなく頼まれたから、誰もやらないからなどの理由でなんでも仕事を引き受けてしまう人、引き受けた仕事は全部自分でやらないと気が済まない人も仕事が進まなくなりやすいです。自分がこなせる仕事のキャパシティを考えられていない、自分の得意分野と不得意分野を理解していないといった理由で、なんでもかんでも自分でやろうとしてしまうのです。
特に、「他の人に仕事を依頼すると、クオリティが維持できない」と思っている人や、「この仕事は自分にしかできない」と思っている人は要注意です。自分でなんとかする気持ちは大切なのですが、自分のキャパシティをしっかり見極めることも重要です。キャパシティを超える分は他の人を信用し、上手に依頼しましょう。
自分の得意分野・不得意分野を理解することも大切で、例えば「この部分はサポートできるので、ここはお願いします」というように仕事を引き受ければ、分担して効率的に仕事を進められます。仕事を一方的に振られてしまったのでなければ、このようにできることとできないことを分けて、内容ごとに得意な人がやった方が生産性もアップするでしょう。
また、他の人に仕事を依頼できない、質問できない人は、そもそもコミュニケーション不足である可能性も考えられます。例えば、資料を作るとき、他の部署で以前作成したものを手直しすれば使える、参考となる資料がある、といったことを知らず、一から資料を作る人はそれだけ時間を無駄にしてしまいます。
コミュニケーションが苦手な人はどうしても質問や相談の過程を省き、自分一人で何もかもやってしまおうとするのですが、一つ業務を覚えるのにすべて自分で情報を調べていてはあまりにも時間がかかりすぎます。上司や同僚のチェックの時間も奪ってしまうので、ある程度は素直に質問したり相談したりすることを怠らないようにしましょう。
仕事が進まなくなりやすい人の特徴③:完璧にこだわりすぎる
情報をすべて自分で調べようとする人にも共通することですが、完璧にこだわりすぎるのも問題です。資料をやたら長く作ったり、情報を盛り込みすぎて要点がわからなくなってしまったりするからです。これを防ぐためには、以下のようなポイントに気をつけましょう。
- この業務において、何が重要なのか
- この業務の、そもそもの目的とは何か
- 資料の提案で、得られるメリットとデメリットは何か
- いくら売り上げが見込めて、どれだけ損失やリスクがあるか
仕事の目的や要点を理解していないと、プレゼンや資料作りで何を突っ込まれるかわからない、という不安からとにかく完璧な準備、完璧な資料を作ろうとしすぎてしまいます。質問や意見、アドバイスはすべてが業務において必要なこととは限りません。すべてに答えられるに越したことはありませんが、無駄な質問や意見まですべてを取り上げる必要はないのです。
同じように、資料の作成も目的や要点でぐっと絞ることが重要です。だらだらと長くわかりづらい資料は、それだけで上司や取引先の印象を悪くしてしまいます。あれもこれも伝えようという完璧主義はかえって良くないということを理解し、要点と結論に絞ったわかりやすい資料を作りましょう。
仕事が進まなくなりやすい人の特徴④:業務のゴールを見据えていない
業務の目的や要点を理解することにもつながりますが、業務のゴールを見据えながら仕事をすることも重要です。どんな仕事でも流れがあり、例えば「部署Aのbさん→部署Aのcさん→部署Bのdさん」と進む資料を作るのであれば、「部署Bのdさん」にOKをもらえるように作るのが最も効率的です。
このとき、自分が部署Aに所属しているとすれば、bさんやcさんは同じ部署なのでチェックを依頼する機会も多いですが、部署の異なるdさんには余裕を持ってチェックを依頼しなくてはなりません。このように、ゴールから逆算していつまでに仕事を進めればいいのかスケジュールを立てられないと、締め切り間近になって時間がないと慌てることになってしまうのです。
スケジュールを立てるときは、仕事の流れとともに優先順位を考える必要があります。「なんとなく気になるから」「同僚からさっき頼まれたから」といった理由で手をつけてしまうと、緊急度や重要度の高い仕事を終わらせられなくなってしまいます。仕事の優先順位は、あくまでも緊急度や重要度をもとに判断しましょう。
仕事の遅さはスキルだけでなく不安が原因かも
前述のように、仕事が進まない原因としてさまざまな問題が考えられますが、他にも「恐れ」「不安」という感情、心の問題が原因になることもあります。例えば、多くの組織で「連携の悪さ」による非効率の問題が挙げられますが、そもそも連携が悪くなる原因として恐れや不安があるのではないか、ということです。
ビジネスにおいて、一般的に感情面は重視されにくい傾向にありますが、人は苦手なタイプの人間関係を無意識的に避けてしまいがちです。その結果、本人が意識していなくても仕事が止まってしまうケースは非常に多いのです。しかも、本人が意識していたとしても「○○さんは怖いので相談しにくいのですが」と上司に相談するのは現実的ではありません。
仕事の遅さの原因が不安のとき、どうすればいい?
特に思い当たることがないのに仕事が遅れやすい場合、自分が仕事を前に進められない状況と、そのときに考えていることや感情をメモやノートに書き出してみましょう。これを「外在化」と言いますが、それによって自分の置かれた状況と心の状態を客観的に眺められるようになります。心の中のモヤモヤとした形のない不安や恐怖も、外在化すると冷静に見られます。
例えば、苦手な人がいて連携が止まっている場合、交渉を上司にサポートしてもらう、交渉の得意な人にそこだけ仕事を代わってもらうなどという前向きなアクションにつなげることもできるでしょう。さらに、管理者の立場からこうした流れを見れば、チームメンバーのどこを支援すれば良いのかのヒントにもなります。
心の問題が大きくて業務が進まない部分を積極的に上司がサポートしたり、担って解消したりすることで、チームメンバーは具体的な業務を安心・集中して進められるでしょう。心の問題の解消はストレス軽減からのモチベーションアップにも、業務の生産性アップにもつながります。ビジネスだからと感情面を疎かにせず、きちんと着目していきましょう。
仕事が遅れがちなのは「うつ病」の可能性も
仕事が遅れる理由として、前述のように不安や恐怖など感情面も影響することをご紹介しましたが、さらに心身のストレスからうつ病を発症している可能性も考えられます。うつ病を発症すると、特に以下のような業務上の変化が目立つようになります。
- ケアレスミスが明らかに増える
- 誰が見てもわかりやすく、仕事のパフォーマンスが明らかに落ちる
- 今までのその人なら考えられないような、ケアレスミスが目立つようになる
- 仕事への熱意や集中力が低下している状態で、注意力も散漫に
- 誤字脱字、計算ミス、期日間違い・忘れ、業務プロセスの忘れや抜かしなど
- 家庭やプライベートでも失敗、物忘れ、うっかり事故やヒヤリハットが増える
- 同僚との会話を避ける
- これまで明るく行動派だった人も、人と関わりを持つのを避けるように
- 自分から同僚に話しかけない、会議などでの発言をしない、食事や飲み会を避ける、など
- 以前と違って暗い、物静かな人になったという印象を受けることも
- 遅刻・当日欠勤が増える
- 身体的・精神的な症状が増えるにつれ、職場に行くことにポジティブになれなくなる
- 事前の報告や申請・連絡がない遅刻、早退、欠勤が多くなってきたら注意が必要
- 離席が多くなる
- 人が多くいる場所やストレスを受けやすい場所は不安で落ち着かず、居た堪れない
- 注意力や判断力が低下し、何をしているのかわからなくなったり、効率的な業務ができなくなったりする
- 落ち着きがない、うろうろする、頻繁に席を離れるなどの行動が見られるように
- 整理整頓ができなくなる
- さまざまなことへの気づきややる気がなくなり、今までできていた整理整頓ができなくなる
- デスクやロッカーを片付けられない、ものがおさまらず山積みになる、散乱するなど
- 自宅でも、片付けてくれる同居人がいない場合、同様の状態に
- 電話の受け答えができなくなる
- 人と会うことや会話することが億劫になり、電話の受け答えや会話ができなくなる
- 自分から電話しない、会社や知人が電話しても出ない、折り返し電話をかけられないなど
- 酷い場合はメールやSNSでも鬱陶しくなり、電話やメールが頻回だとさらにストレスを感じるケースも
- 強い眠気を感じる
- 人によって、または非定型うつ・季節性うつなど種類によって過眠が生じることも
- 夜に不眠が続く場合、日中に激しい眠気が襲うことも稀ではない
- 仕事中、デスクワークや会議での居眠りが頻繁に見られるように
- イライラしていることが増える
- 感情が不安定になったり、ネガティブになったりしていつもイライラしてしまう
- 今までより怒りっぽくなったり、上司や同僚に反抗的になったりする
- 場合によっては周囲の人が驚くほど声を荒げたり、暴力的になったりすることも
上記のような変化が周囲の目から見ても明らかなようであれば、うつ病を発症している可能性が高いと考えられます。本人は自分の変化に気づいていないことも多いため、周囲が先に気づいたときはぜひ専門の医療機関の受診を勧めましょう。
うつ病がひどくなったら、仕事はどうすればいい?
うつ病の症状が悪化し、業務に明らかな支障が出るほどになってしまった場合は、まず専門の医療機関にかかりながら休養をとりましょう。最初は有給休暇など休日をとり、その後、医師と相談の上で休職の申請を行います。休職の際には診断書が必要となりますので、必ず医師と相談し、発行してもらいましょう。
有給休暇でなく休職をすれば、日数を気にしすぎず療養に専念することができます。いったん仕事から距離を置き、気持ちをリセットしなくてはなりません。休職にどうしても抵抗があるという人は、有給休暇をつなげることで1〜2週間の休養をとれないか上司に相談してみましょう。有給休暇なら上司にうつ病と伝える必要はありませんので、「体調不良で業務に支障が出ているので、集中して休みたい」というシンプルな理由で構いません。
休職後、職場に復帰する?しない?
休職して心身の調子が落ち着いてきたら、復職するかどうかゆっくり検討してみましょう。もちろん、現職への復帰だけでなく、転職も含めて検討する必要があります。若年層を中心に広がっている「仮面うつ病」「新型うつ病(現代型うつ病)」などのように、勤務地や働き方を変えることでうつ病が緩和されるかもしれません。
このとき、復職や転職を検討する際にはしっかり主治医に相談するようにしましょう。自己判断で通院をやめたり、薬を飲むのをやめたりしてしまうと、一度おさまった症状がぶり返してしまうことがあります。専門家の指示を受けながら、復職や転職に向けて徐々に準備を進めていきましょう。
そして、実際に社会復帰を目指すときは、やはり専門の就労支援サービスを利用すると良いでしょう。うつ病を抱える人の復職・転職においては、疾患を持たない人と比べて考慮すべき点が多いため、理解ある専門組織の助けが重要なのです。
特に、復職後の業務量調整や異動申請、転職の際に一般枠と障害者枠のどちらを選ぶか、精神障害者保健福祉手帳を取得すべきかなどはなかなか本人には正しい判断ができません。国の定める法律に基づいて運営される就労移行支援事業所のように、0円からスタートして復職支援や転職の手助けをしてくれる機関もありますので、ぜひ一度調べてみましょう。
おわりに:仕事が進まない原因は、不安や恐怖、うつ病などのことも
仕事が進まない原因として、そもそも効率化できていない、仕事を抱え込みすぎているなどさまざまなものが考えられますが、それ以外にも不安や恐怖などネガティブな感情面、うつ病など精神的な疾患の可能性も考えられます。
ビジネスだからと感情を排しすぎず、きちんと着目していきましょう。もしうつ病が疑われる場合は専門の医療機関を受診し、業務に支障が出るほど悪化しているようなら、休職してしっかり休むことが必要です。
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