犬が持つ効果は癒しだけじゃない?犬と触れ合うことのメリットとは?

癒し

ペットとして犬を飼っている人は多いですが、その理由の多くは「飼っていると癒される」「一緒にいて楽しい」といった理由でしょう。もちろん、ペットを飼う上で癒される、楽しいといった要素は重要ですが、犬の持つ効果はそれだけではありません。

今回は、そんな犬の癒し効果の理由や、癒し以外の効果についてご紹介します。特に犬を飼おうか悩んでいる人は、ぜひチェックしてください。

この記事を読んでわかること
  • 犬と過ごすと癒やされる理由
  • 犬が持つ、癒し以外の効果
  • 子どもや高齢者が犬とふれあうことのメリット

犬に癒し効果があるといわれるのはなぜ?

犬と一緒にいると、疲れたり緊張したりしている身体や心がふっとゆるみ、ほぐれるのを感じたことがある人も多いでしょう。こうした犬の癒し効果は科学的にも証明されていて、具体的には以下の4つのポイントがあるとされています。

人の感情を読み取ってくれる
ハンガリーのエドベシュローランド大学の実験で、犬の聴覚野には人間の声色から感情を読み取る場所があるとわかってきた
犬に人の笑い声や喜ぶ声を聞かせると、聴覚野の活動が活発になるが、不機嫌な声を聞かせると、活動が低下した
似たような仕組みは人間の脳にもあり、犬は人と同じように人の喜怒哀楽を読み取れると考えられる
オキシトシンでお互いに癒し合える
麻布大学の菊水健史教授の研究によれば、犬とその飼主が互いに見つめ合ったとき、人の体内で脳の下垂体からオキシトシンが分泌されるとわかった
オキシトシンは心を癒し穏やかにしたり、身体の痛みを和らげたりする
犬と見つめ合ったとき、人間の体内のオキシトシン濃度は3倍以上に増えた
さらに、犬の方も人間と見つめ合うとオキシトシンが分泌され、互いに癒し合えることがわかった
こうしたオキシトシンの分泌が、人と犬の絆を深める仕組みになっていると考えられる
犬は人になつきやすく進化してきた?
キツネは一般的に凶暴で人になつかないが、ロシアの研究所が穏やかな個体だけで繁殖を続けたところ、6世代目にして人に甘える仕草を見せるキツネが生まれた
このキツネの血液を調べたところ、攻撃性を生み出す「コルチゾール」というホルモンが普通のキツネの半分程度に
犬も元を辿れば凶暴なオオカミだが、長い年月をかけて同様の進化が起き、人になつきやすい種が人に保護されて繁殖してきたと考えられる
人懐っこさはコミュニケーション能力でもある?
上記の実験で脳も調べたところ、記憶や学習を司る「海馬」で生まれる新しい神経細胞が通常のおよそ2倍に
脳が若々しい状態を保ち、記憶や学習の能力が高まってきたため、人の指示を理解してコミュニケーションがとれるようになったと考えられる

上記のように、犬は人間の感情を理解して寄り添ってくれたり、見つめ合うことで互いに癒し合えたり、進化の過程で攻撃的なホルモンの分泌が減り、記憶や学習の能力が高まることで人とコミュニケーションできるようになってきたりしたと考えられます。このような特徴が、犬は他の動物と比べて忠誠心が強く、飼い主のことを心から信頼すると言われる所以でしょう。

犬は、飼い主に向ける視線や仕草のすべてで「あなたを信頼しているよ」と示してくれます。仕事に行くときは寂しさを、帰ってきたときには尻尾を振りながら飛び回って嬉しさを表してくれます。それを見て、飼い主は信頼されている、愛されている、必要とされていると感じて嬉しくなることでしょう。

さらに、犬を膝に乗せたり、頭を撫でたりと触れ合うことで、人間の脳内ではオキシトシンが分泌されます。見つめ合うだけでなく、犬と触れ合うことは心理的な効果だけでなく、科学的にも癒し効果があるというわけです。疲れているときにはつい犬に構っている余裕はないと思いがちですが、疲れているときこそ少し手を止めて犬を構うことで、心が穏やかに落ち着けるのではないでしょうか。

犬には癒し以外の効果も期待できる?

動物と触れ合うことでさまざまな良い効果がもたらされること、またそれを使った健康法を「アニマルセラピー」と呼びますが、アニマルセラピーの効果が検証され始めたのは比較的最近のことで、例えば1988年にJulia K. VormbrockとJohn M. Grossbergが行った実験によれば、犬を撫でているときに被験者の血圧が下がったと報告されています。

他にも、さまざまな実験によってアニマルセラピーの効果は徐々に証明されつつあります。具体的には、以下のような報告があります。

  • 高齢者の孤独感減少(Marian & William、2002)
  • 子どものストレス軽減効果(Nagengast、1997)
  • 広汎性発達障害の子どもの集中力向上(Francois、2002)
  • 小児がん患者の入院環境ストレスを軽減(France、2002)
  • 小児てんかんの予知(Adam、2004)
  • 抑うつ症状の減少(Sandra & Kathryn、1998)
  • 統合失調症の意識変化(Inber、2005)
  • うつ病やパーソナリティ障害患者の症状軽減(Yamazaki & Machizawa、1994)
  • 境界性パーソナリティ障害の症状軽減(Sato、2003)
  • 脳血管性認知症患者の運動機能回復(Motooka、2002)
  • 副交感神経の亢進作用(Motooka、2002)

このように、アニマルセラピーには心理的効果から身体的効果、精神症状の軽減、自律神経の調整など、さまざまな効果があるとわかります。さらに詳しく、「生理的効果」「心理的効果」「社会的効果」の3つに分けて見ていきましょう。

犬と触れ合うことで得られる生理的効果って?

生理的効果とは、体内の生理学的な変化(ホルモン分泌、脳内の神経伝達物質、神経系などの変化)によって得られる良い効果のことを指します。代表的な実証実験として、エリカ・フリードマンとメリッサ・グッドマンらが行った「人が他人と話しているときと、ペットに触りながら話しかけているときの血圧を比較する」というものがあります。

その結果、人と話しているときは最高血圧(収縮期血圧)が約145mmHg、最低血圧(拡張期血圧)が約94mmHgと高い数値を示していたのに対し、ペットに触りながら話しかけていたときは最高血圧(収縮期血圧)が約137mmHg、最低血圧(拡張期血圧)が約86mmHgと明らかに低下していました。しかも、この数値は単なる休憩のときよりも下がっていたということです。

つまり、人でなく動物に話しかけることは、血圧を下げてストレスを軽減する効果があると考えられます。しかも、その効果は単に休憩をとるよりも高いのです。さらに、子どもに対する朗読実験でも、部屋の中に犬がいるときの方が朗読中の緊張感が和らげられ、血圧が低くなる傾向があるという報告もあります。

これについて、動物と接している人間の体内では「副交感神経」が優位になることが理由として挙げられます。副交感神経とは、人間が自分の意思ではコントロールできないさまざまな臓器や器官の働きをコントロールする「自律神経」の片方で、日中の活動を司る「交感神経」と対になり、リラックスを司る神経とされています。

副交感神経が優位になると、末梢血管が拡張したり、血圧が低下したり、心拍数が抑えられたりと、血流が良くゆったりとした穏やかな状態(リラックス)になります。動物と接するときに多くの人が感じる「落ち着く」「癒される」という感覚や、血圧が低下するといった生理的な変化は、こうした副交感神経の働きによって生まれるものだと考えられます。

さらに、動物と接する人の脳内では「ドーパミン」という脳内伝達物質の分泌も増えるとされています。ドーパミンは「楽しい」という感情の源泉であり、アニマルセラピーを受ける人にとって「動物と接していると楽しい」というポジティブな経験として記憶が残るでしょう。他にも、犬と触れ合ったり、食事を与えたり、散歩をさせたりして運動量が増える効果も期待できます。

犬と触れ合うことで得られる心理的効果って?

心理的効果とは、動物と接触することで人の内面や行動面が良い方向に向かうということです。例えば、前述のように一度動物と接して楽しかった、という経験をすると、「犬のお腹は柔らかくて気持ちよかった」「毛並みを撫でていると穏やかな気持ちになれる」「また犬と会って楽しい時間を過ごしたい」というように、その経験を思い出すだけで「楽しい」という感情が再現されることも、心理的効果の一つです。

動物と触れ合ったことを思い出して、日常生活の中で「楽しい」という気持ちを感じることが増えれば、抑うつ症状の軽減にもなりますし、長期的かつ全身的な観点で見れば、免疫力のアップにもつながります。さらに、「犬とまた触れ合いたいから学校に行こう」「犬と散歩したいからリハビリを頑張ろう」というように、回復に向かう動機づけにもなります。

犬と触れ合うことで得られる社会的効果って?

社会的効果とは、動物と接することで人と人との交流も円滑になるという効果のことを指します。例えば、老人ホームなどで人とほとんど会話をすることがなかった非社交的な高齢者が、アニマルセラピーの一環として触れ合った犬の話題を通じて、他の入居者とも会話を交わすようになった、といった事例があります。

他にも、震災時の仮設住宅などでは人間関係が希薄になり、ピリピリしやすいものですが、犬や猫などのペットが住民たちの会話の潤滑剤になってくれることがあります。また、動物を連れていることや動物と一緒にいることで印象が変わることは、以下のような実験によってもわかっています。

  • 一人で歩いている人よりも、犬を連れている人の方が話しかけられやすい。また、赤ちゃんを連れている人よりも、ペットを連れている人の方が近づきやすい(ピーター・セメント)
  • 人とペットが一緒に写った写真を見せたところ、社交的な魅力が増し、他人に好ましい印象を与えることがわかった(ランダル・ロックウッド)
  • 障がいを持つ子どもたちが注目されたり話しかけられたりする機会は、犬が側にいるときの方が一人で歩いているときの10倍も多い(リネット・ハート)
  • 囚人や神経麻痺のある人が動物と一緒に写った写真を見せると、魅力的な印象を見る側に与える(アラン・ベックとキャッチャー)

このように、動物と一緒にいる人は多かれ少なかれ他人にとって好ましい印象を与えることがわかります。話しかけられたり、近づかれたりする機会も増えることから、交流のチャンスも増えることでしょう。アメリカ大統領はホワイトハウスに犬や猫を迎え入れることが慣例化していますが、こうした社会的効果と無関係ではないかもしれません。

犬には認知症予防の効果もある?

上記のように、犬にはさまざまな良い効果があることがわかりました。さらには、認知症の予防にも効果が期待できることがわかってきたのです。例えば、以下のようなことが挙げられます。

  • 犬に話しかけたり、周囲の人と犬の話題で話したりして、発語が増える
  • 犬の散歩や世話で運動量が増え、運動機能の改善や筋力維持につながる
  • 犬との触れ合いで、ドーパミンやβエンドルフィンなどの神経物質が分泌される
  • 世話をされているという自己認識から、役に立っている・世話を焼きたいという意識に変わり、自尊心と自発的な活動が増える
  • 犬を通じて会話が増えると、社交性や関心対象が増える
  • 高齢者施設などにおいて、他の入居者やスタッフに対する親近感が増す
  • 犬と過ごすことで、孤独感が軽減される
  • 日々の犬の散歩などによって、定期的な生活習慣が身につく

このように、犬と触れ合うことは認知症の予防になるほか、高齢者にどうしてもつきまとう孤独感や老人性うつ、運動量や筋肉量の低下などの問題にアプローチすることもできます。超高齢化時代の日本において、認知症予防や生活習慣・生活能力の維持は重要な問題です。愛犬と仲良く過ごし、散歩仲間とのコミュニケーションをしたりしながら健康寿命を伸ばすことは、本人にとっても社会にとっても有益なことだと言えるでしょう。

実際に、早朝や夕方に犬の散歩をしながら近所の人と仲良く話す高齢者の姿はよく見かけるものですし、彼らは活き活きとしていて、足腰も元気そうな方が多いのも特徴です。ここで注意したいのは、高齢になってから新たに犬を飼い始める場合、運動量が比較的少なく、世話もしやすい小型犬が良いということです。

大型犬や中型犬では、犬に必要な運動量が多すぎて、高齢者には扱いきれないこともあります。長年一緒に過ごしてきて、犬自身も高齢という場合をのぞき、小型犬にしておくのが良いでしょう。餌代も大型犬や中型犬と比べるとかからないですし、トイプードルなどは賢いので、しつけもよく覚えてくれるはずです。

このように、犬を飼うことは若い世代だけでなく、高齢者にとっても良い精神的・身体的な影響があると言えます。もし、犬を飼おうかどうしようか悩んでいる人がいれば、ぜひ一度飼ってみてはいかがでしょうか。

おわりに:犬は癒し以外にも生理的・心理的・社会的効果がある。認知症予防にも

犬に触れたり、見つめ合ったりすると気持ちが穏やかになったり、緊張がほぐれたりする癒し効果を感じる人は多いですが、他にも生理的・心理的・社会的なさまざまな効果があり、アニマルセラピーとして科学的に実証されつつあります。

また、高齢者の認知症予防、運動量の増加や孤独感の軽減などにも効果が期待できるとされています。ぜひ、高齢者でペットを飼おうとするなら、扱いやすい小型犬などを飼ってみてはいかがでしょうか。

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