ハグとは日本語で「抱きしめる」ことですが、日本ではあまり馴染みのない文化なので、乳幼児期の「抱っこ」を除き、親や兄弟など家族間でも抱きしめられた経験がないという人も少なくありません。
しかし、ハグをすることはさまざまな良い効果があることがわかってきました。今回は、ハグの効果と高める方法、ぬいぐるみや抱き枕を使った方法について見ていきましょう。
ハグにはどんな効果があるの?
では、ハグをすることで実際にどんな効果が期待できるのでしょうか。ハグの効果は主に「リラックス・ストレス軽減」「幸福感アップ」「信頼関係の深まり」の3つだとされています。
ハグの効果①:リラックス・ストレス軽減
ハグによって、お互いの脳内に「β-エンドルフィン」という脳内ホルモンが分泌されます。この物質はモルヒネの数倍にも及ぶ鎮痛作用があり、「幸福ホルモン」「脳内麻薬」とも呼ばれています。気分が高揚したり幸福感を得られたりする作用もあり、β-エンドルフィンが分泌されるとリラックス効果やストレス軽減効果が得られることもわかっています。
他にも「オキシトシン」という脳内ホルモンが分泌され、血圧上昇が抑えられ深く呼吸することができます。深呼吸をすると副交感神経が優位になり、心身ともにリラックス効果が得られます。自律神経のバランスを整えると緊張状態を和らげられますので、落ち着かないときにはハグをするのもおすすめです。
ハグで幸せを感じ、ストレスが解消されればストレスによるさまざまな弊害も抑えられます。ストレスが溜まりやすい人は、ぜひ積極的に恋人や家族・友人とハグの機会を持ちましょう。
ハグの効果②:幸福感アップ
オキシトシンは別名「幸せホルモン」や「愛情ホルモン」とも呼ばれ、分泌されると幸福感や安心感を感じられます。ハグした相手との間に愛情や心のつながりを感じられることが、精神面での安定にもつながります。
現代社会では、愛情や絆といった感情が希薄になっているとされています。現代に生きる我々にとって、人々の社会的な行動を高められるオキシトシンはますます必要とされるホルモンだとも言えます。
また、前述の「β-エンドルフィン」によって高揚感や満足感を得られることで、幸福感につながることもあります。
ハグの効果③:信頼関係の深まり
ハグをすることは、お互いの信頼関係を深める効果も期待できます。ハグをする側もされる側も、ハグを通じて相手からの信頼を得ることができ、相手からの信頼感は「大事にされている」という安心感につながります。
恋人同士なら、愛情表現の一つとしてハグをするでしょう。ハグの度に絆が深まっていくのはごく自然なことと言えます。友人同士でも、喜びを分かちあったり慰めたりするときにハグすることがあり、友情や信頼関係を深めるのに役立ちます。
親子がハグをするとき、親から子への愛情を伝えることができます。日常的にハグをする親子はお互いの関係性が良いとも言われています。特に、小さな子どもは親とハグすることで絶対的な安心感を得られるので、子どもが自我を持つようになる前にたくさんハグをすることは、子どもの自己肯定感を高めるなど人格形成に良い影響を与えるとされています。
その他のハグの効果って?
ハグには、その他にも睡眠障害を改善したり、ダイエットに良い効果をもたらしたりするとされています。ハグで脳内ホルモンの「セロトニン」が分泌されますが、このセロトニンは睡眠を導く「メラトニン」を作り出します。このため、ハグをすることで睡眠の質が高まると期待できます。
また、幸福感や安心感をもたらしてくれる「オキシトシン」は、食欲を抑えたり脂肪を燃やしたりする効果があることもわかっています。無理な食事制限や運動をしなくても、ハグするだけでダイエット効果が期待できるのです。特に、高脂肪食が好きな肥満の人ほど高い効果が得られるとされていますので、効率的にダイエットしたい人はぜひ適度にハグを取り入れましょう。
ハグの効果を高めるにはどうすればいい?
序文でもご紹介しましたが、日本ではまだまだハグの文化が定着しているとは言えません。街中などの人前でハグをすることはもちろん、家庭内でもハグを恥ずかしがって強い抵抗を感じる人もいます。ですから、まずは恋人や家族ととにかくハグを繰り返し、慣れて抵抗感をなくすことが重要です。
そもそも人とハグをすることそのものに抵抗感がある場合は、ぬいぐるみなどを相手に一人でハグを練習しましょう。自分自身を抱き締めるのもハグに慣れることにつながりますので、おすすめです。ハグに慣れたら、次はハグの効果を上げるためのやり方や効果的なタイミングを意識してみましょう。また、やってはいけないNGなハグも確認しておきましょう。
効果を高めるハグのやり方って?
ハグの効果を高めるためには、お互いの密着部分ができるだけ広くなるようにしましょう。向き合う姿勢でも後ろから包み込むようにしても構いませんが、愛情を込めて行うハグの場合、相手がきつく感じない程度のやや強めハグが良いでしょう。他にも、以下のようなポイントを心がけるとより効果的です。
- お互いに愛し合っている、好き合っている相手と30秒間行う
- 恋愛、家族愛、友愛などなんでも良いが、お互いに好意を持っている相手と行う
- ハグによって血圧が低下し、副交感神経が優位になるまで少し時間がかかる
- ハグしてすぐに離すのではなく、30秒くらいそのまま抱きしめ合うことでリラックスできる
- 相手が落ち着いたころに、背中をさする
- 相手の鼓動がゆっくりになってきたら、優しく背中をさすってあげると情緒が安定する
- 約5cm程度の幅を、ゆっくりした手の動きで撫でるのがポイント
- 言葉を添えると効果が倍増するので、耳元で優しく声をかけるのもおすすめ
また、愛情を持って触れる行為(スキンシップ)であれば、必ずしもハグでなくても相手の気持ちを落ち着かせたり、ストレスを解消したりできます。辛い部分に手を当ててもらったり、さすってもらったりすると痛みや辛さが和らぐこともよく知られていますが、これもやはりβ-エンドルフィンやセロトニンなどのホルモン分泌が促されるためだと考えられます。
ハグをするときに効果的なタイミングとは?
ハグの効果を高めるためには、ハグするタイミングも少し気をつけてみましょう。例えば、以下のようなときにハグをするのがおすすめです。
- 嬉しくて興奮したとき
- 嬉しい出来事があって興奮しているときは、ベストタイミング
- スポーツで自分のチームが勝ったとき、試験に合格したときなど感情が高まったとき
- ハグして一緒に喜びを分かち合う人がいると、さらに嬉しさが増す
- 相手が不安そうなとき
- ハグはリラックス効果が得られるので、相手の不安を取り除いて安心感を与えられる
- 友人や恋人が不安そうにしていたら、ハグでマイナスな感情を解消してあげよう
- ハグしながら、優しく言葉をかけてあげるとより効果的
- 寒い場所にいるとき
- ハグすることでお互いの身体を温め合えるので、ハグしたいけれどタイミングが掴めないというときの言い訳にも
- 女性は冷え性の人も多いので、恋人同士が温め合いながらハグもできる
- 「さようなら」のとき
- デート中にハグしたいけれど、ハグの後に気まずくなったらどうしようと悩んでしまう人に
- 初めてのデートが成功したと感じたら、さようならのタイミングでハグしてみるとよい
- 笑顔で手を振って別れれば、良い意味での余韻が残りやすい
喜びを分かち合うときや、不安を和らげたいときはぜひ積極的にハグしましょう。また、ハグしたいけれどタイミングが掴みづらい、という人には寒さを言い訳にしてしまうのもおすすめです。恋人同士の初めてのハグなら、初デートが成功したと感じたとき、最後にギュッと抱きしめて別れると良い余韻を残せるでしょう。
効果を下げてしまうハグもある?
ハグで最も注意すべき点は、ハグの良い効果はすべて「お互いに好意を持っている相手」でないと生じないということです。愛情がない相手、嫌いな相手とハグすることはリラックスにならず、ストレスを解消できないどころか、むしろストレスが増してしまうこともあります。
嫌いな人や苦手なものに触れそうになると身体がビクッと緊張しますが、緊張すると硬直状態になり、神経は興奮してしまいます。もちろん、この状態ではオキシトシンなどのホルモンは分泌されませんので、血圧が上がったり呼吸が浅くなったりしてしまいます。
同様に、片想いの相手や片想いされている相手とのハグも効果はあまり期待できないとされています。オキシトシンはお互いに好意を持っている相手とハグするときに放出されることがわかっていますので、ハグの効果を得るためには愛し合う恋人同士や、仲の良い友人同士・家族同士で行うようにしましょう。
ぬいぐるみや抱き枕にハグしても効果がある?
ハグは必ずしも人間にしなくてはならないというわけではありません。ハグをするような相手がいない場合や、恋人が遠距離でなかなかハグできないという場合、ぬいぐるみや抱き枕など自分が愛おしいと思えるものを抱きしめることでも、オキシトシンが分泌されるなどハグと同様の効果が得られることがわかっています。
ただし、ペットをハグしたい場合は注意が必要で、人間側の都合だけで自分勝手に抱きしめてもやはりハグの効果は得られません。ペットの場合は人間同士と同様、信頼関係をしっかり構築してから愛情を持ってハグしましょう。
また、不安なことや寂しいことがあると眠れなくなる、いびきが出たり呼吸が浅くなったりする、といった睡眠障害のある人には、抱き枕にもなるような大きなぬいぐるみを抱いて寝るのがおすすめです。ハグによる安心感やリラックス効果が得られることはもちろん、抱きしめて寝るときの姿勢が横向きになるのでいびきをかきにくくなり、睡眠時無呼吸症候群やうつ伏せ寝の予防にもなります。
ぬいぐるみを抱きしめて寝ることは、安心感やセラピー効果にもつながります。
ぬいぐるみを抱きしめるのは安心感のためって本当?
ぬいぐるみを抱きしめると、安心感を得られてリラックスできます。これは特に乳児期・幼児期の子どもに顕著で、母親から離れることに不安を感じ、お母さんの代わりをしてくれるものを探し求めた結果、ぬいぐるみに辿り着くというわけです。ふわふわした感触に癒されたり、ぬいぐるみに触れているだけで安心したりできます。
このため、普段はぬいぐるみを抱いて寝ていないものの、最近はよく抱いて寝ているという大人の場合、一時的に安心感が満たされていない状態だと考えられます。家庭環境や人間関係がうまくいっていないときなど、足りない安心を求めてぬいぐるみを抱きしめるのです。強い不安感やストレスが背後にあり、ぬいぐるみで心を安心させて実生活のバランスをとろうとしていると考えられます。
大人がぬいぐるみを使うのは恥ずかしいと思ってしまう人もいるかもしれませんが、そもそも歴史的にもぬいぐるみは本来、大人が使うものでした。つまり、大人が寝るときにぬいぐるみを抱きしめることは恥ずかしいことではなく、むしろ理にかなっていると言えるでしょう。不安・ストレス・悩みの多い現代社会で、ぬいぐるみは大人にこそ大きなメリットをもたらしてくれるのです。
ぬいぐるみにはセラピー効果があるの?
うつ病の改善方法に「ぬいぐるみセラピー」というものがあります。オランダの研究グループがぬいぐるみの持つ大人への癒し効果についての研究を行った結果、ぬいぐるみに触れることは精神状態を落ち着かせ、癒しをもたらすことがわかっています。
ぬいぐるみによる癒し効果は、一種のセルフヒーリングだと見ることもできます。ぬいぐるみに自分自身の寂しさ・不安・いたたまれなさを投影し、それを自ら抱きしめることで、自分で自分の心を抱きしめて癒すといった感覚が得られるのです。
おわりに:愛し合う相手とのハグはストレス解消、幸福感や安心感につながる
ハグはリラックスやストレス解消のほか、幸福感や安心感をもたらしてくれます。愛し合っている相手と30秒間抱きしめ合い、背中を優しくさすってあげるとより効果的です。ただし、お互いに愛情を注げる相手でないと効果がないので注意しましょう。
また、ハグする相手がいない場合、ぬいぐるみや抱き枕でも同様の効果が得られることがわかっています。睡眠障害のある人や精神状態が不安定な人は、ぜひぬいぐるみをハグしましょう。
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